酔客が多い帰りの電車に入った途端、「うっ、クサっ!」と思わず吐きそうになった経験のある人は多いだろう。車内の悪臭の大半は飲酒による口臭が原因だ。あなたも飲むと知らず知らずのうちに同じ口臭を発している。
その臭いは「ネズミ臭」と呼ばれ、原因物質は「悪臭防止法」や「大気汚染防止法」の規制対象となっている公害の元ばかり。実に人迷惑なにおいなのだ。
顔がすぐ赤くなる女性は要注意
酒を飲むと、なぜひどい口臭を発するのか。専門歯科医のサイトをのぞくと、次のような段階のメカニズムで悪臭物質が体内から飛び出してくる。
(1)酒を飲むと、肝臓がアルコールを分解し、毒素であるアセトアルデヒドが作られる。アセトアルデヒドはさらに分解されて、最終的に酢酸などの有用な酸に変わる。しかし、飲み過ぎると肝臓の分解機能が追いつかなくなり、中間物質のアセトアルデヒドのまま体内にたまり、二日酔いなどの悪さをする。
(2)アセトアルデヒドは、「ネズミ臭」とか「生ゴミ臭」といわれる悪臭があり、「悪臭防止法」の規制対象である特定悪臭物質に指定されるほど臭いがキツイ。
(3)アセトアルデヒドの臭気は、吐いた息から外に広がるばかりか、汗や皮膚の呼吸によって体表から蒸気となって発散する。酒の弱い人はアセトアルデヒドが体内に残りやすい。特に、顔がすぐ赤くなる女性は要注意だ。口臭だけでなく、アセトアルデヒドの蒸気が服についている恐れがある。
(4)アルコールには利尿作用があり、体内の水分が失われて口内も乾燥し、唾液が分泌しなくなる。すると、唾液によって繁殖を抑えられていた口内の雑菌が増え始める。特に、歯周病の原因菌である嫌気性菌(けんきせいきん)が猛烈に繁殖を始め、硫化水素とメチルメルカプタンの臭気ガスを発生させる。
(5)硫化水素は「腐ったタマネギの臭い」、メチルメルカプタンは「腐った卵の臭い」といわれ、2つとも「悪臭防止法」ばかりか「大気汚染防止法」の特定悪臭物質にまで指定されるほど臭いが激しい。自分で気づかずに口臭を出している人は、公害(口害)を周囲にまき散らしているわけだ。
(6)日本人の55歳以上の50%は歯周病患者といわれるが、酒をよく飲む人は歯周病になりやすい。韓国やブラジルの研究によると、酒をよく飲む人は飲まない人より歯周病になるリスクが約30%高まる。特に女性の場合は、3.8倍も多くなるというデータがある。