トウガラシの辛み成分であるカプサイシンは、満腹感をもたらしてダイエット効果があるといわれてきたが、実際は胃腸を荒らすから食欲がなくなるという、実もふたもない研究をオランダ・マーストリヒト大学のチームがまとめ、米の臨床栄養学誌「AJCN」の2015年12月号に発表した。
胸焼けや腹痛、吐き気、腹部膨満で食べる気が失せる
カプサイシンは、非常に強い刺激作用があり、鎮痛薬や催涙スプレーに使われるほど。農林水産省が出している食品安全情報の「カプサイシン」の項目をみると、「適度な辛さは食欲を増進させ、おいしく食事をする手助けになる」と効果を認めつつ、「食べ過ぎると粘膜を傷つけ、のどや胃を荒らし、咳や息切れを起こす」と注意を呼びかけている。
研究チームは、健康で正常な体重の若者13人(平均年齢22歳)を2つのグループに分け、一方にカプサイシン1.5ミリグラム(鷹の爪トウガラシ1本半の含有量)の溶液を、もう一方に食塩水を、それぞれ十二指腸の中にカテーテルを使い注入した。そして、満腹感や胃腸の症状、消化管ホルモンの血中濃度を測定して比較した。消化管ホルモンは、食事をとると腸から分泌される食欲を調整するホルモン。分泌量が多いと満腹感が高まり、食欲がなくなる。
2つのグループを比較すると、消化管ホルモンの分泌量はほとんど変わらなかった。カプサイシンを摂取したグループは胃腸が荒れ、胸焼けや腹痛、吐き気を訴え、腹部膨満の症状を示した。そして、食塩グループに比べ、満腹感は高かったという。これまで、「カプサイシンは消化管ホルモンの分泌を促し食欲を抑えるのでダイエット効果がある」といわれてきたが、胃腸の調子が悪くなり、食欲を失うことがわかった。
トウガラシを利かせた料理を食べる時は、くれぐれも食べ過ぎに注意したい。