東大は「東京アスペ大学」と呼ばれても仕方がない――。東京大学の大学院に在籍していたという男性が寄せたこんな趣旨のツイートが、ネットで波紋を広げている。彼によれば、東大生の25%に「発達障害の疑いがある」というのだ。
アスペルガー症候群(アスペ)は自閉症の一種で、他人とのコミュニケーションや周りの空気を読むことを苦手とする一方で、高い集中力や優れた記憶力を持つ例も多いといわれる。
「東大はアスペに優しい大学です」
「東大はアスペに優しい大学」「アスペ同士気が合う仲間を見つけられる」――。そうツイッターで語ったのは、三味線奏者・芸人として活動する萩原遼さん(41)だ。都内にある法律事務所の客員顧問の肩書も持っており、同事務所のウェブサイトに掲載されたプロフィールによると、東大大学院法学政治学研究科を中退しているという。
そんな萩原さんが2016年2月2日、東大在籍時代に一番驚いたのは「自閉症スペクトラムに対する重厚なサポート体制だった」とツイッターへ投稿した。続けて、「聞くところによると東大生の四人に一人が自閉症スペクトラム疑いアリ」だとも述べ、この数字は一般的な割合を遥かに上回ると主張した。
こうした理由を述べた上で、萩原さんは「(東大が)東京アスペ大学などと呼ばれるのも、その差別的な響きを除けばあながち不当ではないのかもしれん」と結論付けた。また、別のツイートでは、
「東大はアスペに優しい大学です。バックアップ体制といい、心理士と医師の充実っぷりといい、何よりアスペ同士気が合う仲間を見つけられるという点は大きいかも」
とも述べている。こうしたツイートについて本人は、「東大はいい大学だよ、と言いたかっただけ」だとして、差別的な意図は一切ないと説明している。だが、あまりに断定的な主張に疑問の声が寄せられていることも確かだ。
「東大へ進学した先輩は軒並みアスペ揃い」
そもそも、「東大にアスペが多い」という萩原さんの主張に確かな根拠は一切ない。本人は「カウンセラーにそう言われたから間違いない」としているが、その専門家が東大の全学生を対象に調査したとは思えない。
また、萩原さんの過去のツイートを遡ると、「(東大生は)自分たちが普通だと勘違いしている」「工学部の連中はおそらく全員アスペです」といった投稿も見つかった。今回の萩原さんの主張は、大学院に在籍した際の体験が加味された「見方」という可能性が高いとみられる。
だが、当の東大生からは、思いのほか肯定的な反応が寄せられている。ネット上には、東大生と関わりがあるというユーザーから、
「東大にアスペ対応があるとか聞いたことなかった、僕はなにも特別な対応されたことないよ。でも1/4がアスペなのはマジだと思う」
「そりゃあそうだろう。東大出身のセンセで知ってる方、ほぼ確実にアスペだし」
「ぶっちゃけ、東大へ進学した先輩は軒並みアスペ揃い」
といった意見が上がっている。また、現役の東大生に話を聞いても、「他の大学に比べてそういった学生はかなり多い印象を持っています。4人に1人アスペがいると言われても、全く違和感は覚えません」という。
「東大が多くの発達障害の人を抱えるのは事実」
さらにいえば、東大が発達障害を持つ学生の支援に力を入れていることも事実だ。2010年には、発達障害の学生をサポートする専門機関である「コミュニケーション・サポートルーム」を立ち上げている。
その開設シンポジウムで、主催の東京大学学生相談ネットワーク本部は、「東大が多くの発達障害の人を抱えるのは事実」「支援室の開設は発達障害と共に生きる東大としての第一歩」などと語ったという。また、日本学生支援機構の調査によれば、東大は対人関係スキルを身につけるためのセミナーを全学生に向けて開催しているそうだ。
今回の件について、東大のコミュニケーション・サポートルームに取材を試みたが、「私達は学生たちを守る立場なので、メディアで扱って頂く場合には慎重になっています」として、今回の取材には回答できないということだった。