プロ野球で一時代を築いた清原和博容疑者の逮捕は、全国に衝撃を与えた。容疑は覚醒剤取締法違反(所持)だが、本人が覚醒剤の使用を供述しているとの報道も出始めた。
専門医によると、薬物の使用をやめて体からすっかり抜いたとしても、薬物依存症という「病気」は残ったままだという。過去には誘惑に負けて再犯を繰り返した芸能人もいる。依存症から立ち直るための方法とは。
脳が依存性薬物に「ハイジャック」される
元タレントの田代まさしさん。覚醒剤取締法違反で実刑判決を受けて服役し、現在は薬物依存症に陥った人の更生を支援する施設「ダルク」のスタッフとして働く。清原容疑者逮捕を受け、2016年2月3日放送の「NHKニュースウォッチ9」のインタビューでこう述べた。
「寂しさとか孤独とか、最初はそこから(薬物に)入るけど、1回やってしまうと『次に(やめよう)次に』という気持ちが勝ってしまう」
「『今日でやめる』と心に誓うけど、それでも負けてしまうのが薬の魔力」
長年、薬物に苦しめられてきた田代さんの発言からは、自分の意志だけで薬物を断つのは非常に難しい現実が分かる。清原容疑者が、継続して覚醒剤を使っていたかどうかは現時点では断定できない。だが、本人の部屋から覚醒剤や注射器、黒ずんだパイプが見つかったことから常習性を疑う声も出ている。
薬物依存症に関する著書が多い精神科医、松本俊彦医師が日本精神神経学会のウェブサイトで、その恐ろしさを説明している。薬物をやめても、「かつて薬物(を)よく使用していた場所を訪れたり、一緒に使用していた薬物仲間と出会ったり、あるいは覚醒剤の粉末を溶かすために携行していた500mlのミネラルウォーターのペットボトルを目にしたりするだけで、薬物の欲求が蘇ることがあります」というのだ。
薬物依存症とは「脳が依存性薬物に『ハイジャック』され、自分の意志や行動が薬物にコントロールされている状態」と定義。使用をやめた後も、何かの形で薬物を思い出した際に「薬物を使いたい、やめたい」との葛藤がかなりの期間続くそうだ。