幼い乳幼児を虐待する痛ましい事件が毎日のように報道されている。妊娠から子育て期の女性は心身が不安定な時期で、きめ細かいケアが望ましい。
日本看護協会が2016年1月28日、東京で開いた「地域母子保健シンポジウム~妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援に向けて」には、全国の医療機関や行政で働く約300人の助産師らが集まった。
バラバラ家族はダメ
厚生労働省は15年度から「健やか親子21(第2次)」を展開、その中で「切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策」をうたっている。一瀬篤・母子保健課長が国の狙いを解説した後、産前産後ケア推進協会の市川香織・代表理事が取り組みのポイントを紹介した。
妊婦は「休息」「授乳のケア」を求め、「話を聞いてほしい」「優しくしてほしい」と願っている。産後1か月までは両親が妊婦をサポートしてくれるが、以降の夫は、仕事で頼りにならないことが多い。そんな時に産後ケア施設があると、休め、育児技術を学び、乳房ケアが受けられる。話をじっくり聞き、優しく対応するケアの重要性を強調した。
日本産婦人科医会の木下勝之会長は「母子の心の健康」に焦点を当てた。子どもの心の健康は、親、特に母親との愛着にかかっている。子どもは胎児期から母親の精神に敏感で母親の精神状態は子どもの脳の発達に影響する。虐待された経験のある母親は虐待する率が高く、乳幼児期の虐待は脳を壊す。子どもの健全な発育のためには一時期までは母親、あるいは祖母、少なくとも大人の養護者が不可欠だ。個人でテレビやスマホを見ていて、共感のないバラバラ家族はだめ。たとえ乳児保育施設が充実しても、仕事としての保育士は決して親の代わりにはならない、と指摘した。
午後は大阪府立母子保健総合医療センターと群馬大学付属病院の具体的な取り組みが発表された。
(医療ジャーナリスト・田辺功)