深刻な地方銀行から預金を減らし始める?
じつは、国内でも口座維持手数料を取っていた銀行はある。インターネット専業のジャパンネット銀行は2012年7月まで、月額180円(税別)を徴収していたが、現在は無料。三菱東京UFJ銀行も、インターネットバンキングの利用者向けの「スーパー普通口座」で徴収していたことがある。「総合的な判断」から現在は廃止したが、2009年6月までは残高10万円以下の預金者に月額300円(税別)の手数料がかかっていた。
また、2015年11月1日にシティバンク銀行のリテール事業を統合して発足したSMBC信託銀行プレスティアは、現在も、取引残高など一定の条件を満していないと、月額2000円(税別)を口座維持手数料として徴収している。
一方、経済学者で慶応大教授の池尾和人氏は、2016年1月29日付の言論プラットフォーム「アゴラ」で、「マイナス金利政策により予想されること」と題して、「銀行が預金者に負担を転嫁。これまで徴収していなかった口座維持手数料をとるようにするなどのかたちで、預金金利をマイナスにする」と、言及している。
メガバンクに目が向くなか、むしろマイナス金利の影響が深刻なのは、預金が過剰に集まっている地方銀行や信用金庫。池尾氏もツイッター(2011年2月19日付)で、「私も最近、日本の(とくに地方)銀行は(例えば、口座維持手数料の導入などで)預金を減らす勇気をもつべきではないかと考えるようになりました。『希望を捨てる勇気』ならぬ、『預金を捨てる勇気』。」と語り、銀行が預金を受け入れすぎているとみているようだ。
預金は運用しなければ銀行はコスト倒れになってしまう。前出の小田切氏も「導入するのであれば、地方銀行からの可能性が高い」とみている。
銀行の規模縮小は免れないが、預金を減らしてでも運用リスクを下げることが必要になってきたというわけだ。
そうした中で、日銀の黒田東彦総裁は2016年2月3日、東京都内で開かれた講演会で、導入を決めたマイナス金利について、「必要な場合、さらに金利の引き下げを行う」と述べ、マイナス幅の拡大による追加金融緩和を辞さない考えを示した。
実行されれば、銀行の収益力はますます低下する。