国際基督教大学(ICU、東京都三鷹市)の2015年度の入試問題で出題ミスがあり、採点をやり直した結果、追加合格者を出していたことが分かった。入試問題でミスがあった場合、大学側は事実関係をウェブサイトで公表するのが一般的で、ICUも過去の入試については同様の対応だった。ところが15年度の入試については、外部から指摘を受けても出題ミス・追加合格ともに公表してこなかった。
ICUは入試問題をウェブサイトで公開しているが、事実関係を公表しないままに「出題ミス」だと指摘された部分を修正。市販の過去問題集、いわゆる「赤本」は修正前の状態で販売されており、正誤表も入っていない。事実関係を公表しなかったことで、受験生が誤った問題を解き続けていた可能性もある。ICUはJ-CASTニュースの問い合わせを受けて半日が経過した2016年2月3日夕方、「受験生保護の観点から環境が整った」などとして初めて事実関係をウェブサイトで公表した。
「国民総生産(GNP)」を「国民総生産(GDP)」と誤記
出題ミスがあったのは、15年2月に行われた「人文・社会科学」のうち、「『バブル経済が破綻した』帰結として、適切ではない記述」を4つの選択肢から選ばせる設問。4つのうち1つは明らかに適切でない記述を含んでおり、出題者はこの選択肢を「正解」だと想定していたはずだ。ところが、それとは別の選択肢に「2000年代初頭には発行残高が国民総生産(GDP)を超えていた」という記述があった。「国民総生産(GDP)」という組み合わせは存在せず、「国民総生産(GNP)」が正しいとみられる。そうなると、この選択肢も「適切でない記述」で「正解」だとも解釈できる。
今回の出題ミスは、塾講師でつくる「全国入試問題研究会」(福岡市)が15年10月に指摘。11月24日になってICUは
「出題内容、採点結果等を精査した結果、表記に誤りがあったと判断いたしました」
などと文書で出題ミスを認めたが、採点のやり直しといった対応については
「文部科学省と相談の上、進めております」
とするにとどめた。その後も出題ミスは公表されなかったが、ウェブサイトに掲載されている入試問題のPDFファイルは正しい内容のものに差し替えられた。PDFファイルの更新日は15年11月20日。ファイルを差し替えた上で指摘に回答していたことが分かる。
ICUは16年1月22日、「全国入試問題研究会」の再度の問い合わせに対して追加合格者を出したことを明らかにしたが、
「当大学は学生数が少なく、公表すると追加合格者が特定されるおそれがある」
などとして出題ミス、追加合格ともに公表しない方針を繰り返したという。
「追加合格者の保護を最優先に考え、公表しない方針」
ICUは16年2月3日18時頃、アドミッショズ・センター名で「お詫びとお知らせ」をウェブサイトに掲載し、出題ミスと追加合格の事実を認めた。ウェブサイトの文章では、
「追加合格に関する詳細は、追加合格者の保護を最優先に考え、公表しない方針です。なお、追加合格者への対応は、すでに終了しています」
と説明している。J-CASTニュースが事実関係をメールで問い合わせたのは2月3日未明。ICUの広報担当者は
「社会的情勢の変化を踏まえ、昨秋(編注:15年秋)から非公開を前提に協議しておりましたが、当該受験生保護の環境が整いましたので、表記の誤りについて公表することといたしました。なお、追加合格の詳細は公表いたしません」
と説明しており、半日ほどで環境が整ったことになる。
ICUは12年と13年には出題ミスについて公表し、12年には追加合格者を出したことも明らかにしていた。13年2月9日に行われた入試の出題ミスは2月12日、12年2月4日の出題ミスは6月11日にそれぞれ公表されている。
文部科学省によると、15年度に出題や採点をめぐる「入試ミス」が原因で合格発表後に追加合格者を出した事案は、任意で報告があった分だけでも20大学で26件発生している。そのうち18大学24件が私大だった。