「悲しい出来事なくても人は悲しくなる」 心理学界130年ぶりの謎が解けた

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   「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」という有名な心理学の学説が出されたのは約130年前だが、真実かどうかの立証は非常に難しく、心理学、生理学、脳科学などの面からずっと議論が続いてきた。

   早稲田大学理工学術院の渡邊克巳教授らのグループによって間接的に裏付ける研究がまとまり、米科学誌「米国科学アカデミー紀要」(電子版)2016年1月11日号に発表された。

  • 「泣くから悲しい」なら、泣かなければ楽しい?
    「泣くから悲しい」なら、泣かなければ楽しい?
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声に「悲しい」「怖い」などの感情を与える機器

   チームは、人間が話している時の音声に「楽しい」「悲しい」「怖い」などの感情表現を与えるデジタル音声装置「DAVID」を開発、参加者に「悲しい」という感情が加えられた自分の声を聞かせると、気持ちが「声」に同調した。

   「泣くから悲しい」説は、1884~85年に米のウィリアムズ・ジェームズとデンマークのカール・ランゲの2人の心理学者によって提唱された。このため「ジェームズ=ランゲ説」と呼ばれる。実験で立証するには、「悲しい出来事」がなくても、「悲しくなる」ことを確かめなくてはならず、技術的に難しかった。

   渡邊克巳教授らが開発した「DAVID」は、デジタルプラットフォームを使って、人が話している時に声の感情的なトーンを、「楽しい」→「悲しい」→「怖い」などと少しずつ変えることができる。実験では、参加者たちは自分の声が聞こえるようにヘッドホンを耳に当て、村上春樹の短編小説の1節を淡々と朗読してもらった。

   この朗読の間、参加者に分からないように「DAVID」に感情フィルターをかけ、参加者の声の感情を「うれしい」→「悲しい」→「恐ろしい」などと少しずつ変化させた。参加者は、自分の声が変化していることにまったく気づかず、また感情を込めることなく朗読を続けた。

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