ベルギーで行われた自転車レースで、前代未聞の不正行為が発覚した。自転車のフレームの中にモーターが仕組まれ、「電動アシスト自転車」になっていたというのだ。
選手は「自分の自転車」ではないと関与を否定しているが、この種の不正が大規模な大会で発覚するのは初めて。「技術的ドーピング」だとして波紋が広がっている。
競技団体が「技術的ドーピング」規定設けた直後
問題が起きたのは、ベルギーで行われていた自転車のシクロクロス世界選手権。ロイター通信や英BBCによると、国際自転車競技連合(UCI)のブライアン・クックソン会長が2016年1月31日の記者会見で、U-23(23歳以下)の部門に出場していたベルギーのフェムケ・ファン・デン・ドリエッシュ選手(19)の自転車のフレームの中からモーターが発見されたことを明かした。クックソン会長は、
「技術的不正行為があったことは完全に明らか。『隠しモーター』があった。これについて秘密にすることがあるとは思わない」
などと不正行為を激しく非難した。
優勝候補のひとりだったファン・デン・ドリエッシュ選手は1月30日のレースで、終盤に「技術的問題」を理由に棄権。その後、自転車の検証作業が進められていた。
業界ではこれまでにも「モータードーピング」が噂されてきたが、実際の大会で表沙汰になったことはなかったという。UCIでは「技術的ドーピング」に関する規定が2015年に設けられたばかり。仮に違反が確定すれは、指定6か月の出場停止と2万~20万スイスフラン(237~2369万円)の罰金が科せられる。
前出のクックソン会長は会見の中で、
「不正行為をしようとする人に対して、土曜日(1月30日のレース)は明確なメッセージを送ったと言える。こういった不正行為を見抜く我々の技術はうまく機能しているようだ。必ず捕まえ、処罰する」
と不正行為の摘発に自信を見せた。UCIは、隠れたモーターから出た電波を検知する装置を導入したといい、不正摘発に向けた準備を進める矢先の出来事だった。