人気アイドルグループ「嵐」を大特集、グラビア12ページ掲載――。こんな内容をうたって発売された集英社のファッション誌「non-no」2016年2月号。電子書籍版では肝心の「嵐」メンバーの顔や体が全て灰色に塗り潰されていた。
本来は楽しげな写真だった「嵐のお泊り合宿」というグラビアページも、無機質なシルエットが枕投げやトランプに興じる異様な写真になっている。写真掲載、とりわけネット上での使用を厳しく規制するジャニーズ事務所の方針が反映されたものとみられ、ネットでは不満の声が上がっている。
まるで「かまいたちの夜」
嵐の5人を表紙に大きく掲載した15年12月19日発売の「non-no」(16年2月号)は、「嵐大特集」と題し巻頭から12ページにわたってメンバーのグラビアを掲載している。1ページを丸々使った5人のソロショットのほか、「嵐のお泊り合宿」と題した企画ページもあり、あわせて100枚以上の写真が掲載されている。
だが、同日発売された電子版では、全ての写真に登場する「嵐」の顔や身体が全て灰色に塗り潰されていた。例えば、各メンバーの写真を大きくデザインしたソロショットのページでは、全体の8割近くが灰色で覆われた状態になっている。また、旅館の1室を使って撮影された「お泊り合宿」のグラビアを見ると、灰色のシルエットが枕投げやトランプに興じている。もはや、ただのホラー写真にしか見えない。
とあるユーザーがこうした写真を16年1月31日にツイッターに投稿したことで、ネット上で大きな注目を集めることになった。ツイッターには、
「電子書籍版の雑誌だとジャニーズの人の写真はみられないのか」
「相変わらずのジャニーズ規制wいい加減アホやろ」
「ジャニーズは電子書籍になると『かまいたちの夜』になってしまうのか!」
「完全に『かまいたちの夜』だ」
といった投稿が相次いで寄せられている。「かまいたちの夜」とは、1994年に発売されたミステリーゲームのことだ。ペンションの宿泊客が殺人事件に巻き込まれるというストーリーで、登場人物を青いシルエットで表現した斬新な演出で話題を集めた。
灰色に塗り潰された嵐のメンバーが登場する今回の写真から、20年以上前のゲーム作品を連想した人が多かったようだ。31日昼には、ツイッターの「トレンドワード」やヤフーの「話題なう」にもゲームの名前が登場していた。
ジャニーズは「ネットNG」
実は、電子書籍版の雑誌で芸能人の写真が塗り潰されるのは珍しいことではない。とくにジャニーズ事務所は、ウェブ媒体への写真掲載を厳しく規制していることで有名で、電子書籍にもその方針が反映されているという見方が強いようだ。
「non-no」の発行元である集英社を含む複数の出版社に「ジャニーズ事務所のタレントを電子書籍に掲載できない理由」について取材を試みたが、いずれも返答はなかった。しかし、ネット上には、電子書籍の編集作業に携わっているというユーザーから、
「雑誌とかだとジャニーズ消し忘れた!消したからデータ差し替えてね!が配信前日とかでも多々ある」
「嵐のところだけ隠せって言われたのは肖像権の問題なのか。意味も分からずやってたわ」
「嵐が電子書籍で塗り絵になってて、手間かかってるってツイートがあるんだけど、全ジャニーズを顔認証で顔+身体を塗り絵にするプラグインはあるんだなぁ」
などと、内情を暴露するような声が上がっている。
また、ジャニーズ事務所の「ネット規制」は、写真だけでなく「音声」にも及んでいるようだ。16年1月29日放送のラジオ番組「たまむすび」(TBSラジオ)では、ジャニーズ事務所所属の風間俊介さん(32)が出演したため、通常行っていたネット配信が停止された。この影響で、地方のリスナーがラジオを聞けない状況になったようで、ネット上には批判の声が寄せられていた。
ほかにも、嵐の二宮和也さんが出席した15年8月のCM発表会で、主催企業が「マネキン」を用意したことがあった。これは、ジャニーズタレントの写真掲載が禁止されているネット媒体に配慮したもので、マネキンは二宮さんと全く同じコスチュームを着用していた。こうした対応はまるで冗談のようだが、この発表会に関するニュースサイトの記事を見ると、本当に二宮さんの代わりにマネキンの画像を掲載している。