「中国側は実際には国有化の必要性を理解し、受け入れると信じている」
メールでは、佐々江氏との電話会談の感触を、
「日本政府は一連の検討を終えたばかりで、中国側は激怒していたようだ。しかし、佐々江氏は、中国側は実際には国有化の必要性を理解し、受け入れると信じている」
と報告しており、「(I'm not so sure)」という1文で終わっている。「私にはよく分からない、確信が持てない」の意味で、日本側の楽観ぶりを疑問視していたことになる。
2012年9月5日には、政府と地権者が売買契約の締結で合意したことが報じられている。この報道によると、合意したのは9月3日。合意直後に佐々江氏は米側に連絡していたことになる。ロシアのウラジオストクで9月9日に行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議後には、野田佳彦首相が中国の胡錦濤国家主席と非公式に会談している。野田氏は国有化に理解を求めたが、中国側は反対姿勢を表明。会談は物別れに終わった。
米国が懸念していたように、会談時点で中国が実際に「激怒していた」可能性があるが、日本政府が閣議決定を経て国有化を完了したのは、わずか2日後の9月11日だった。
菅義偉官房長官は16年2月1日午前の記者会見で、
「尖閣諸島3島の取得・保有にかかる過程の中で、外交ルートでさまざまなやり取りが行われたことは事実だと思う。そこについて明らかにすることは差し控えたい」
と述べ、コメントを避けた。