インフルエンザ流行のシーズンがやってきたが、女性ホルモンのエストロゲンにインフルエンザ・ウイルスの増殖を抑える効果があることが、米ジョンズ・ホプキンス大学の研究でわかり、米医学誌「AJP-LCMP」(電子版)の2015年12月18日号に発表された。
エストロゲンは男性も分泌するが、この効果は女性限定だ。
マッチョな男がインフルにかかりやすい理由
これまでもエストロゲンには、エイズ・ウイルスやエボラ・ウイルス、肝炎ウイルスに対して抗ウイルス作用があることが知られていた。また、インフルエンザのワクチンは、男性より女性に効きやすく、ワクチンが効きにくい男性は、男性ホルモンのテストステロンの値が高いという報告もあった。
そこで研究チームは、エストロゲンがインフルエンザ・ウイルスにも影響を与えるかどうかに着目した。ウイルスの主な感染箇所である鼻の粘膜細胞を男性と女性から採取。そして、インフルエンザ・ウイルスを細胞に感染させ培養した。そのサンプルのうち女性の細胞にエストロゲンを入れると、ウイルスの増殖が千倍近くも緩和された。しかし、男性の細胞には何の変化もなかった。
男性もエストロゲンを分泌するが、もともと女性に比べエストロゲンの受容体が非常に少ないので、効力を発揮しなかったとみられる。
研究チームのサビーラ・クライン教授は「今回の発見は新しいインフルエンザ治療薬の開発につながるものです。閉経前の女性は、エストロゲンの分泌量が1か月の中で大きく変化するため、この効果を実感するのが難しいでしょう。しかし、ホルモン療法を用いている女性では、インフルエンザにかかりにくいことは確認できると思います」と語っている。