2016年は国内で空港の滑走路や空港ビルの運営権を民間に売却する動きが加速しそうだ。先頭を切るのは、関西国際空港(関空)と大阪(伊丹)空港だ。政府が100%出資する新関西国際空港会社が、関空と伊丹空港の運営権を、オリックスと仏空港運営大手「バンシ・エアポート」の企業連合に売却することが決まった。これによって、4月1日から日本初の純民間企業による空港運営が始まる。
民営化は今後、仙台、福岡など地方空港でも進む予定だが、果たしてこれでサービスは向上するのだろうか。今後の行方が注目される。
関空・伊丹はオリックス・仏連合で4月から運営スタート
空港の運営権売却は「民活空港運営法」に基づき、安倍政権が成長戦略の一つに位置づけている。関空と伊丹空港が全国の空港民営化のモデルケースとなる。運営権の売却とは、空港を管理する政府や地方自治体などが施設を所有したまま、運営権を民間企業に期限付きで売却するもので、「民間のノウハウを空港運営に生かし、サービスや収益力の向上が期待できる」(政府関係者)という。
関空の場合、運営権の売却は、大阪湾を埋め立てるなどした巨額の建設費の返済が目的だ。1994年に「日本初の24時間運用空港」として開港した関空は、埋め立てによる人工島建設などで1兆円超の債務を抱えている。運営権売却の最大の狙いは、新関空会社が抱える巨額の債務返済につなげることにある。
運営権を獲得したオリックスとバンシ連合は、空港運営会社「関西エアポート」を設立。同社にはオリックス、バンシのほか、関西電力など計32社が出資する。同社は関空と伊丹空港を44年間運営し、毎年490億円の運営権料などを負担する。総額では2兆2000億円になる。
関西エアポートは、空港ビルの物販収入などで稼いで、韓国などアジア周辺諸国に比べて高いとされる関空の着陸料を引き下げ、格安航空会社(LCC)の就航を増やそうとしている。契約終了の2059年度に両空港の営業収益を2014年度の約1.7倍に引き上げることを目指している。