サッカーの23歳以下(U23)アジア選手権の決勝戦では、日本と韓国が対戦する。「因縁の対決」とも呼べるカードだが、すでに場外で「歴史戦」がくすぶっている。
韓国代表選手のひとりが、準決勝終了後に韓国メディアに対して「最近は慰安婦の話も沢山出てくる」として、「無条件に勝つ」と必勝を誓ったというのだ。この発言をした選手は決勝には出場しないが、過去にはロンドン五輪で政治的主張を展開したとして処分された韓国代表選手もいる。慰安婦問題をめぐる日韓の合意から1か月が経っても具体的な動きが見られないだけに、決勝戦後の他の選手の言動に注目が集まりそうだ。
「歴史的なこともあり、最後の戦いは無条件に勝たなければならない」
アジア選手権はリオ五輪の最終予選を兼ねてカタールのドーハで開催されている。韓国は2016年1月27日(日本時間)準決勝でカタールを破って8大会連続で本選の進出を決めた。その直後のインタビューでファン・ヒチャン選手(20)選手が口にした言葉が波紋を広げている。聯合ニュースや、東亜日報系の「スポーツ東亜」によると、ファン選手は、
「劣勢でも自信を持ってドリブルした」
などと戦術面を振り返った後に日韓関係にも触れた。
「日韓戦は絶対に負けられない。勝つと思うだけだ。慰安婦の話も、最近よくでてくる。歴史的なこともあり、最後の戦いは無条件に勝たなければならない」
と発言した。
この発言を、韓国メディアは「慰安婦のために必勝」といった見出しをつけて報じた。
だが、スポーツ選手にとって試合直後の政治的発言は「御法度」だとも言える。12年のロンドン五輪のサッカー男子3位決定戦では、韓国は日本と対戦。試合後のグラウンドで、朴鍾佑(パク・チョンウ)選手が「独島は我が領土」などと書かれたプラカードを掲げ、竹島(韓国名・独島)の領有権を主張した。五輪憲章では五輪施設や会場での政治的な宣伝活動を禁じており、FIFAも試合で政治的メッセージを掲げることを禁止している。朴選手はこういった規定に抵触していると判断され、2試合の国際試合出場停止と3500スイスフラン(約41万円)の罰金処分の処分を受けた。
すでにファン選手は韓国代表チームを離脱
この発言をめぐる日韓の「空中戦」も始まっている。日本のデイリースポーツは、発言を、
「今回はピッチの外ではあったが、再び波紋を呼びそうだ」
と論評。韓国の「スポーツ東亜」は、この記事を引用しながら
「このような雰囲気に日本のネット利用者も加勢した。ファン選手の発言には批判な声が相次いだ」
と報じた。
朝鮮日報によると、ファン選手が所属するオーストリア・ザルツブルクは、同選手がチームを離脱して韓国代表に合流することに難色を示していたが、本人の出場の意思が固いこともあって、五輪出場が決まるまでは代表チームでプレーすることに同意。韓国がカタールに勝って五輪出場が決まったため、直後に韓国代表チームを離脱してオーストリアに向かった。日本代表でザルツブルクに所属する南野拓実選手も、同様の理由で決勝には出場しない。
日韓が対決する決勝戦は1月30日に行われる。