過去の提携で外資に懲りたスズキ
とはいえ、これまでもスズキを「自動車メーカー再編のトリガー」と見る向きは少なくなかった。スズキは2015年6月にカリスマ経営者の鈴木修会長の後継として長男の鈴木俊宏氏が社長に昇格。8月末には、独フォルクスワーゲン(VW)との資本・業務提携の解消を発表した。16年は攻勢をかけていきたい1年だ。
そもそも、スズキにとってVWとの資本・業務提携はVWがもつ環境・安全技術を取り入れることが狙いだった。提携を解消したからといって、その技術を手にしたわけではない。加えて、中国や欧州のほか、新興国でも燃費規制が段階的に強まる方向で、対応する技術をもたないスズキにとって、次世代の環境・安全技術の取り込みは喫緊の課題だ。
スズキの「お相手」はどこか――。スズキは過去、米ゼネラル・モーターズ(GM)と資本提携していたが、同社の業績悪化で関係は解消している。そのあとに収まったのがVWだった。
また、かつてマツダと資本提携していたフォードが日本市場から撤退を表明するなど、米自動車メーカーの日本市場への評価は低い。独立系の投資情報会社、TWIの自動車セクター・アナリストの高田悟氏も、「米自動車メーカーとの提携は選択肢としては細いとみています」と話す。
スズキはVWとの提携に失敗しているため、「外資には懲りている」との見方もある。
国内をみても、「スズキが必要とする環境技術はHVや燃料エンジンです。EVという選択はほとんどないでしょう。たとえば、EVに注力する日産自動車という選択は考えられません」と、高田氏はいう。
トヨタとは、現社長の鈴木俊宏氏がトヨタの開発部門を前身にもつ日本電装(現デンソー)を経て、スズキに入社。人的つながりもある。高田氏は「スズキのインドでのプレゼンスが高く評価されるのであれば、トヨタは有力」とみている。
お互いに、交渉の選択肢としてはあっても不思議ではないということのようだ。