静岡市消防航空隊のヘリコプターが富士山頂付近で遭難した男性の救助中に落下させ、後に死亡が確認された問題で、静岡市が事故の検証などを踏まえ、「標高3200メートルよりも高い現場には出向かない」という基準を作っていたことが分かった。
この事故をめぐっては、後に男性の遺族が訴訟を起こしている。今回の救助作業上の事故再発防止策は、過酷な条件下での二次災害を防ぐことを主眼に置いているが、危険が指摘される冬山登山をめぐるトラブルが、結果として行政の救助活動を委縮させたという指摘も出そうだ。
富士山の3500メートル付近の救助活動で死亡
事故は2013年12月、富士山御殿場口登山道9.5合目付近(標高約3500メートル)で京都の男女4人が滑落し、そのうち男性1人をつり上げて救助しようとする際に起きた。隊員が男性をヘリに収容する直前に救命器具が外れ、男性は約3メートルの高さから地面に落下した。悪天候などからヘリは救助を断念し、翌日になって別の部隊が男性を発見した。男性は心肺停止状態で、後に死亡が確認された。
静岡県内で運用されている消防防災ヘリは、県、静岡市、浜松市の計3機。事故当時、県の防災ヘリは定期点検中で出動できず、3自治体間で結んでいる相互応援協定に基づいて県から要請を受けた静岡市が救助に出向いた。静岡市の消防航空隊は南アルプスで3000メートル級の救助活動に対応できるような訓練を積んでいるものの、富士山の9.5合目付近で活動するのは訓練を含めて初めてだった。
この事故をめぐっては、救助活動に過失があったとして、男性の遺族が15年12月、静岡市を相手取って9169万7100円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしている。