小錦の横綱昇進問題では「外国人差別」が浮上
一方、日本対モンゴルの見立てに、白鵬は神経をとがらせていたという。「10年ぶり」についてこう語っている。
「(自分は)10年間に35回も優勝し、大相撲を引っ張ってきた実績がある」
栃東優勝の後、朝青龍が引退するまで2人で24場所中22場所も優勝している。その後も、白鵬は15場所も一人横綱として各界を支えた。その自負がコメントに表れたのだろう。
八角理事長も異様な雰囲気に慌てた。それがこの言葉だ。
「出身にかかわらず、頑張った者が優勝する」
かつてハワイ出身の小錦が、横綱昇進できなかったことに関連して、差別があったと受け取られるような発言をした、として騒ぎになった。理事長としては、外国人力士に支えられている大相撲の現状を思えば、二の舞は絶対に避けなければならないことで、火消しに回ったともいえる。
間もなく32歳になる琴奨菊の初優勝は初土俵から66場所目。大関昇進後、ケガと5度のカド番を経ているだけに、予想外の出来事といえた。聞くところによれば、専属トレーナーとのコンビで半年にわたって独自トレーニングをしたという。
「琴奨菊関の押す力はおそらく世界一。ただ腕の力だけではそれが出ない。下半身を使えば実力を発揮できる」
テレビで塩田トレーナーは、そう語り、タイヤを使うなどの鍛錬で持ち前の推す力が全開したと分析している。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)