シャープ「再建策」は本当にまとまるのか 「利害錯綜」で報道も乱れ飛ぶ

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   経営不振に陥っているシャープの経営再建策を巡り、主要取引銀行や経済産業省、海外メーカーなどとの交渉が大詰めを迎えている。2015年春には250円を超えていたシャープの株価は経営不振が深刻化するにつれて値を下げ、16年の年明け後は130円前後で乱高下している。

   シャープは早期に再建策をまとめ、投資家の信頼回復につなげたい考えだが、関係者の利害は交錯しており、ギリギリの調整が続く。

  • シャープ再建策を具体化する上で、詰めるべき課題はまだ多い
    シャープ再建策を具体化する上で、詰めるべき課題はまだ多い
  • シャープ再建策を具体化する上で、詰めるべき課題はまだ多い

政府、官民ファンドにメガバンク、台湾企業の思惑

   2016年の年明け以降、主要メディアでシャープ支援策の報道が相次いでいる。官民ファンドの産業革新機構が2000億円を出資し、分社化した液晶事業と、同機構が筆頭株主の液晶メーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)を統合。みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の主力2行に1500億円規模の追加金融支援を要請する案が報じられたほか、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が7000億円規模の買収提案をしているとも報道されている。

   液晶事業で強みを持ってきたシャープだが、同事業に対する過去の過大な投資で経営が悪化し、2015年5月に経営再建策を発表した。国内外で5000人規模の人員削減を行うほか、主要取引銀行から2250億円の金融支援を受けるのが柱だった。シャープは、これで事業の立て直しを図るとしていたが、その後も中国経済の減速などを背景に液晶事業の採算が悪化し、2015年9月中間決算では251億円の営業赤字(前年同期は292億円の黒字)に転落。生き残りのためには新たな再建策のとりまとめが必要となり、関係者との協議を進めてきた。

   政府内では「シャープの液晶技術や人材が海外に流出すれば、日本企業の競争力低下を招く」などの懸念が出ており、経産省や産業革新機構はシャープの液晶事業を存続させ、JDIとともに日本発の液晶技術の強化を図りたい考え。ただ、シャープ本体に機構が出資して支援する案が浮上しているものの、「次世代の国富を担う産業の創出」を目指すとしている機構が不振企業を丸ごと「救済」することには批判も根強い。

2016年3月末には5000億円の借金返済

   一方、銀行側は液晶技術を国内に残すことには理解を示す声が多いものの、貸し出し債権の確保を図りたいのが本音。2015年5月に、返済が必要な借金を優先株に切り替える金融支援を行ったが、今回、振り替えた優先株の無償譲渡を求められており、実質的には債権放棄ということになる。さらに、これ以外に1500億円の融資を優先株に振り替えることも求められており、合わせると3500億円規模の金融支援を行うことになる。

   1年に満たない短期間で2度目の金融支援は受け入れがたいというのが銀行本来の立場だ。鴻海の買収案と機構案と、どちらが有利か、近く判断する見通しだが、1月22日付けの「日経」朝刊は「シャープ再建大筋合意」と1面トップで報じ、銀行も支援を受け入れたとする一方、同日付けの「朝日」などは「主力行の判断が焦点となる」など、銀行が意思決定には至っていないとの見方を示している。こうした各紙の報道ぶりは、水面下の激しい綱引きをうかがわせるが、銀行としても、安易な金融支援を行い、多額の損失を被ることになれば、銀行自身が株主から経営責任を問われかねないという事情もあるだけに、慎重になるのは当然だ。

   話を整理すると、シャープの再建策を具体化する上では、(1)機構などが出資する場合、分社化した液晶事業に出資するのか、シャープ本体に出資するか(2)主要取引銀行にどこまで金融支援を求めるか(3)液晶事業を分社化した後、家電や複写機などシャープに残る事業をどうするか......など詰めるべき課題は、まだ多い。

   シャープは2015年4~12月期の決算発表を行う2月上旬までに再建策をまとめたい意向だが、「それには時間が足りない」と指摘する関係者は少なくない。さらに、3月末には約5000億円の借金の返済期限が迫っている。

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