仰向けになり両手を頭の後ろに組んで、ひじが膝にあたるまで上体を起こす――。「シットアップ」と呼ばれ、筋トレの定番だった腹筋運動だが、「腰や背中を痛める原因となる時代遅れのトレーニング」として敬遠する人が増えている。
ひと昔前、スポ根の代名詞だった「うさぎ跳び」が学校教育の場で盛んに行われたが、膝や腰を痛めるだけで筋トレ効果がないことが医学的に立証され、すたれた例がある。「腹筋」も同じ運命をたどるのだろうか。
ヨガから生まれた「プランクポーズ」とは
最近、「腹筋有害論」を勢いづかせる新聞記事が出た。2015年12月25日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された「腹筋運動は時代遅れ 米軍が体力測定から除外へ」だ。内容を抜粋して紹介すると――。
≪米海軍専門誌「ネイビー・タイムズ」は論説で、海軍兵士に毎年2回課せられる体力テストから腹筋運動を除外するよう要求した。理由として「時代遅れの運動であり、腰回りを痛める主要な原因」と記した。
海軍兵士の体力テストは、腹筋運動、ミニマラソン、腕立て伏せの3つだが、体力テスト中にけがをした兵士約1500人を調査すると、原因は腹筋が56%、ミニマラソンが32%、腕立て伏せが11%だった。
カナダ軍は、けがの恐れと、実際の軍の任務とは関連が薄いため、体力テストから腹筋を除外した。代わりに重さ約20キロのサンドバックを30回持ち上げる実用的なテストを取り入れた。
体育学の専門家は「腹筋の屈曲運動によって背柱に過剰な力が加わり、椎間板を突出させ、椎間板ヘルニアを発症させる危険性が高い」と指摘する。
インストラクターの中には、シットアップに代わり腹筋を鍛える運動としてヨガから派生した「プランクポーズ」(写真2)を推奨する人が多い。腕立て伏せの上がった状態に似ており、ひじを床につけた姿勢で、かかとから肩までを水平に保つ。体幹の前部、側部、背部の全体の筋肉をくまなく使う≫