2016年1月24日に投開票された沖縄県宜野湾市長選は、現職の佐喜真淳氏(51)=無所属、自民、公明推薦=が、翁長雄志知事が支援する新人で元県幹部の志村恵一郎氏(63)=無所属=を大差で破り、再選を決めた。
佐喜真氏は、市内にある米軍普天間飛行場の早期撤去を訴えたが、名護市辺野古沖への移転の是非については言及しないままだった。出口調査でも辺野古移設に否定的な声の方が多く、佐喜真氏の再選で辺野古移転にはずみがつくかは未知数だ。ただ、世代別にみると、50代を境に志村氏は高年齢層、佐喜真氏は若手から多く得票している。世代交代が進むにつれて「辺野古容認度」が高いという傾向も明らかになりつつある。
「辺野古反対」でも2割以上が佐喜真氏に投票
佐喜真氏が辺野古移転反対を明確に掲げた志村氏を破ったことで、安倍政権内には安堵の声が広がった。ただ、出口調査を見る限りでは、「辺野古反対」という大きな流れは続いている。沖縄タイムス社、朝日新聞社、琉球朝日放送(QAB)による調査では、辺野古移設に「賛成」と答えた人が34%だったのに対して、「反対」が57%。琉球新報社、毎日新聞社、共同通信社の調査でも、33.2%が「賛成」、56.0%が「反対」と回答している。
いずれの調査でも佐喜真氏が「賛成」と回答した人の9割以上を固め、「反対」と回答した人も2割以上が佐喜真氏に投票。佐喜真氏が1期目の実績を集中的に訴えたことで、志村氏が辺野古移転反対票を「取りこぼした」可能性もありそうだ。
沖縄タイムス・朝日・QABの調査では、年代別の投票行動も分析している。50代では佐喜真氏と志村氏の支持が拮抗し、それより上の層では志村氏が優勢だった。志村氏は70代の59%、60代の56%から得票した。これに対して佐喜真氏は20~40代の得票で上回り、特に30代では3分の2以上の67%を固めた。
「何を一番重視したか」という質問に対する答えで最も多かったのは「普天間飛行場の移設問題」で、全体の48%を占めた。この問いも、世代別で様相が大きく変わってくる。
70歳以上では60%が普天間問題を挙げ、経済・福祉政策を挙げた人は13%にとどまった。これに対して20代では普天間問題35%、経済・福祉政策30%と拮抗した。こういった結果からは、年齢層が下がるにつれて基地問題への関心が低下し、投票行動に影響する割合も小さくなっている様子がうかがえる。
高校生は普天間移設先について「わからない」36.0%
1年ほど前に高校生を対象に行われた調査でも、同様の傾向が出ている。沖縄歴史教育研究会と沖縄県高教組が15年1月から3月にかけて県内の高校60校を対象に行った調査では、「普天間基地の移設場所について、どう思いますか」という問いに対して「わからない」が最も多く36.0%で、「国外・県外移設」34.6%、「普天間そのまま」20.7%、「辺野古移設」8.8%と続いた。
前回10年の調査では、「国外・県外移設」46.8%、「わからない」32.7%、「普天間そのまま」14.8%、「辺野古・勝連沖」5.7%だった。この5年間で「国外・県外移設」が大幅に減少し、その分「辺野古」「普天間そのまま」容認や、無関心な人が増えていることがうかがえる。
普天間の辺野古移設問題は、16年6月の県議選、夏の参院選でも大きな争点になることは確実だ。特に参院選からは選挙権年齢が18歳に引き下げられることになっている。こういった「若い声」が移設問題にどう影響するかにも注目が集まりそうだ。