外科系学会社会保険委員会連合(外保連)が主催する記者懇談会が2016年1月12日、東京で開かれた。外科系学会が集まり、臨床技術のコスト計算をし、科学的な診療報酬のあり方を検討する外保連の発足は1967年。
82年に初めて手術試案を公表、以来、厚生省・厚生労働省に適切な診療報酬の算定を働きかけている。
459 項目の技術度、人件費、材料代、要望点数などをまとめる
16年度診療報酬改定向けに刊行された『外保連試案2016』は、手術、処置、検査、麻酔459 項目の技術度、人件費、材料代、要望点数などをまとめた。たとえば人件費は、経験何年の医師、看護師、技師らが何人、何分働くかを、医療職国家公務員の給与をもとに計算した精密なものだ。
川瀬弘一・手術委員会委員長(聖マリアンナ医大小児外科)は前回14年の診療報酬改定では、国が手術時間の短縮のみに着目し、子宮手術の点数を下げたことを遺憾とし、効果や手術緊急度などを考慮した評価方式を訴えた。それにより、大動脈りゅう、緊急帝王切開、斜視など55手術への特別な点数配慮を要望した。
平泉裕・処置委員会委員長(昭和大学整形外科)は使用する材料の高額化により、人件費もまかなえない処置が増えている現状を訴えた。高い技術が求められる急性すい炎への動脈注入療法、気管内薬液注入などが例示された。
診療報酬が低く、割に合わないとして出産を扱う病院が減っていることは知られているが、記者からは「必要な手術や処置が不採算のために行われなくなっているケースがあるか」との質問もあった。担当役員からは「がん専門病院で黒字は癌研究会有明病院ぐらい、他は赤字だが大部分は国公立のため補填でもっている」「大学病院の 3分の 1は赤字だが、やりくりで何とかカバーしている」との返事があった。
(医療ジャーナリスト・田辺功)