トヨタ労組、過去最高益なのに「ベア要求」半減の理由 優等生「春闘」に着いていけない系列企業たち

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   2016年春闘の相場形成に大きな影響を持つトヨタ自動車の労働組合は、会社側への要求案をまとめ、賃金を全体として底上げするベースアップ(ベア)を月額3000円とする方針だ。2月中旬に会社側に提出する。3年連続のベア要求ではあるが、2015年春闘の要求(月額6000円)の半分にとどめた。

   安倍政権の経済政策「アベノミクス」の恩恵を十分に受けていない下請け中小企業などに配慮した結果で、政府からの賃上げ圧力が続くなか、日本を代表する大企業の労働組合も微妙な舵取りを迫られている。

  • 安倍政権の求める賃上げに躊躇する大企業も少なくない(写真は2010年2月撮影)
    安倍政権の求める賃上げに躊躇する大企業も少なくない(写真は2010年2月撮影)
  • 安倍政権の求める賃上げに躊躇する大企業も少なくない(写真は2010年2月撮影)

15年は6000円要求で過去最高4000円の回答

   ベアは、退職金を含めて生涯にわたって賃金を底上げする。まさに賃金のベースを上げるもので、会社にとっては将来にわたって負担が増えることになる。一時金(ボーナス)については、多くの企業が「毎年いくら」とあらかじめ決めていることはなく、その時その時の業績を反映して金額を上下させているのがほとんどだ。「業績と連動する」と決めている会社もあり、金額のダウンもよくある。しかし、今の日本では、毎月の給料について「賃下げ(ベースダウン)」はハードルが高く、一度ベアを決めると、倒産が視野に入るなどの経営危機にでもならない限り、ベアに基づく賃金体系は固定されたままになることが多い。

   しかし、バブル崩壊以降、日本経済がデフレから完全に脱却できないなか、日本企業の賃金交渉は岐路を迎えている。多くの日本企業は高度成長期以来、インフレ傾向が続いたこともあってベアを続けてきたが、常にベアを実現する労働コストをまかなえなくなってきている。特に2008年のリーマン・ショック以降、多くの企業が業績悪化に直面し、数年にわたり組合の方がベアを要求しない春闘が続くなど、かつてとは風景が様変わりした。自動車大手の労組がベア要求を復活させたのは、2014年春闘だった。

   アベノミクスによる円安で息を吹き返した製造業、特に自動車産業は復活をとげ、盟主たるトヨタは過去最高益を更新するまでになった。こうした中、政府からの賃上げ圧力もあってトヨタ労組は2015年春闘でベア6000円を要求し、過去最高となる4000円という回答を会社から得た。

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