原油安で手元資金が減少、ファンドから取り崩し
個別銘柄をみると、たとえばサウジアラビアのSWFの「SAJAP」は、2014年3月末時点で3552万株を保有していたマツダ株を、15年3月末までに一気に2842万株を売って、710万株に減らした。また、スルガ銀行株は483万株から24万株を売却。15年3月末は458万株となった。ナブテスコ株も15年3月末には251万株あったが、わずか半年後の9月末には192万株に減らした。
一方、原油での利益を運用原資にしていない中国のSWF「OD05」は、2008年ごろからトヨタ自動車やホンダ、ソニーなど多くの日本企業の大株主に名を連ねていたが、15年3月末までにほぼ姿を消したという。
ピークの12年度末には167社、時価総額(推定)で約4兆円を保有していたが、2013年ごろから大株主から消えたり、保有株を減らしたりするケースが増加。「OD05」の動向を分析してきた、ちばぎん証券顧問の安藤富士男氏は、「15年12月末時点でわかっているは、イビデンやアルパイン、サマンサタバサなど6銘柄だけ」で、時価総額は推定で500億円程度まで減ったとみている。
現在保有しているイビデン株も、ピーク時の14年9月末には672万株を保有する筆頭株主だったが、それを1年後の15年9月末には515万株まで減らした(株主順位は第5位)。安藤氏は、「中国の外貨準備高の減少とともに減らしてきています」と説明する。
たしかに、中東や中国のSWFが投資した資金を続々と取り崩しているようだ。
第一生命経済研究所・経済調査部の主任エコノミスト、藤代宏一氏は、「1月18日時点で、騰落レシオが売られすぎの目安となる70を大きく下回る『58.9』となる、異例の低水準にあります」と指摘。「2000年以降で騰落レシオが60を割り込んだ局面は今回以外にわずか6回(23営業日)しかなく、それらの大半はITバブルやリーマン・ショックという世界的な株価の下落局面にみられたものです」と話す。
かなり危機的な状況のように思えるが、藤代氏によるとまだ、そこまで追い込まれてはいないようだ。藤代氏は「SWFが日本株を売り進める心配はありますが、ファンドによる『暴落危機』というのは言い過ぎ。日本株は利益確定売りのターゲットになってしまっただけです」とみている。
現在の株式市場は、「むしろライブドア・ショック後の2006年6月に近い状況で、当時が再現されるならば、株価は近いうちに急速に回復することが見込まれます」と話す。
個人投資家にとっては、そうあってほしいと祈るばかりだ。