日本人女性のがんの中で最も多く、12人に1人が生涯のうちに患うという乳がん。「早期発見、早期治療」が大切といわれるが、いったいどの程度早く治療すれば良い結果に結びつき、治療が遅れて時間を費やすと悪い結果になるのか。米国でがん登録データベースを使った大規模な検証が行なわれた。
研究を発表したのは、米ペンシルベニア州のフォックスチェイスがんセンターのチーム。米医師会誌「JAMA」(電子版)の2015年12月10日号に論文を発表した。1か月ごとに平均10%ずつ死亡率が高まるという。
30日遅れるごとに7~16%ずつ危険が高まる
乳がんは、胃がんや肺がん、大腸がんのように加齢とともに増えるがんとは異なり、30代から増加しはじめ、40歳代後半~50歳代前半にピークを迎える。発症には女性ホルモンが大きく影響しているが、最近は閉経後の女性にも増えている。早い診断と早い治療が大切で、治療法が進歩して80~90%の人が5年以上生存することができるようになった。
研究チームは、乳がんと診断されてから手術までの期間と、5年以上生存率の関連を調べるために、乳がん患者21万334人のデータを対象にした。診断から手術までの期間を、(1)30日以下(2)31~60日(3)61~90日(4)91~120日(5)121~180日、の5段階に分けた。また、死亡率は、転移した結果を踏まえて乳がん以外の死因も含めて分析した。
その結果、間隔が1段階ずつ上がるごとに、全患者の中に占める死亡率(5年以内)が7%~16%ずつ大きくなることがわかった。特にこの傾向は、がんが比較的早い段階のステージ1~2の乳がんで見られたという。
研究チームでは、今回の結果について、「乳房再建のような治療選択の検討のために時間が必要とはいえ、生存の見込みを大きくするためには、手術までの時間を可能な限り短くするべきです」と語っている。
また、「この研究は、手術をするか、抗がん剤や放射線療法を使うかの違いを調べたものではない」と強調している。いずれにしろ「早い段階で治療法を選択して行うことが大切だ」と説明している。