この記事を読み始めたアナタ、ちょっと立ち上がって、両目を開けたままで「片足立ち」をしてみてほしい。1、2、3......と20秒間バランスを保つことができるだろうか。もし、できなかったら要注意だ。自覚症状がなくても、脳血管に異常が起きている可能性がある。念のため専門医に診てもらおう。
「片足立ち」が20秒以上できない人は、脳卒中リスクが非常に高いというショッキングな研究が米国心臓学会の医学誌「ストローク」に発表されたのは2014年12月だ。論文をまとめたのは、京都大付属ゲノム医学センターの田原康玄准教授らのチーム。田原准教授は、ふだんは遺伝子情報から病気を知る研究を続けているが、簡単にできる方法で重大な病気のリスクを知る方法はないかと「片足立ち」を思いついた。
20秒以上できない人は、小さな脳梗塞がどんどん起こっている
研究チームは、平均年齢67歳の男女1387人(男性546人・女性841人)を対象に、両目を開いたまま片足立ちをしてもらい、バランスをとっていられる時間(最長60秒まで)を測った。1人2回行い、時間が長い方を採用した。また、MRI(脳磁気共鳴画像)で脳の血管の状態を検査、同時に認知機能のテストも行った。対象者は全員、愛媛大学病院が実施した「抗加齢ドック」の参加者で、健康に自信のある人が多かった。
結果は、1030人(74.3%)が最長の60秒。89人(6.4%)が40秒以上~60秒未満。120人(8.7%)が20秒以上~40秒未満。そして、148人(10.7%)が20秒未満だった。
20秒未満だった148人は、MRIの検査結果から、自覚症状のない「脳小血管疾患」になっている人の割合が非常に高いことがわかった。脳小血管疾患とは、脳内の微細な血管の病気をいう。「ラクナ梗塞」(細い動脈が詰まって起こる小さな脳梗塞)や、「微小出血」(細い動脈が破れる微量の脳出血)などのことだ。
具体的には、20秒未満の人々(全体の10.7%)が対象者全体にみられた脳小血管疾患に占める割合は、次のように非常に高い比率だった。
(1)ラクナ梗塞が2つ以上あった人のうち34.5%。
(2)ラクナ梗塞が1つあった人のうち16.0%。
(3)微小出血が2つ以上あった人のうち30.0%。
(4)微小出血が1つあった人のうち15.3%。
ラクナ梗塞や微小出血は脳梗塞や脳卒中の初期の症状で、すぐに命の危険はないが、放置しておくと、進行して重大な症状を引き起こしやすい。片足立ちが20秒未満の人は、認知機能テストの成績も悪かったという。