国際サッカーのワイロ問題でうんざりしているところへ、今度は陸上界、さらにテニス界のスキャンダル疑惑が表面化した。すべて「裏金」がからむ出来事だ。
オリンピックのメーン競技である国際陸上連盟のディアク前会長に関する疑惑が表面化したのは2016年1月14日のことである。世界ドーピング機関(WADA)の独立委員会が報告書で公表した。
前陸連会長の息子が選手に金銭要求
「前会長がドーピング疑惑のロシア9選手を世界大会に出場させないように働きかけた」
その選手は13年のモスクワ世界陸上選手権に出場せず、疑惑は隠された。つまり前会長はWADAの役目をつぶしたというわけである。本来なら陸連会長は疑惑選手を処分する立場なのに、むしろ不出場にすることで救ったことになる。
さらに悪質なのは、その裏で前会長の息子(陸連の仕事に従事)が疑惑の選手に対し、疑惑をネタに金銭を要求していたことだ。ロンドン五輪の女子1500メートル1位(金メダル剥奪)の選手が告白している。
「3万5000ユーロ(約450万円)を支払った」
とんでもないディアク一家である。モスクワ大会を実現したのは前会長で、その後、前会長はロシアから友好勲章を受けた。
その余波は日本にも及んだ。
「東京が国際陸連に協賛金を出した」
報告書の中で、そういうトルコの証言があった、というのだ。これは2020年五輪誘致に絡んでいるような疑惑含みである。
20年五輪の誘致合戦は、事実上、東京とトルコのイスタンブールによる決戦だった。イスタンブールは国際陸連や陸上大会に要求された協賛金を出さなかったが、東京は払ったとしている。陸連といえばスポーツ界でも大きな力を持つ。
びっくりしたのが遠藤利明五輪担当相で「その話は信じがたい」とのコメントを出した。金で開催権を買ったと批判されたら、東京五輪の盛り上がりに水を差されることになるのだから、大慌てだったことだろう。