東京商工リサーチによると、2015年の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は前年比9.4%減の8812件となり、7年連続で前年を下回った。水準はバブル経済に沸いていた1990年の6468件以来、25年ぶりの低さだ。
倒産件数の減少はアベノミクスの効果と言うこともできるが、負債総額は12.7%増の2兆1123億円と3年ぶりに増加するなど、気になる要素もある。2015年1月に民事再生法の適用を申請した国内航空3位のスカイマークなど負債100億円以上の大型倒産も増えている。
12月に負債1000億円以上の大型倒産が相次ぐ
15年12月には、年金資産運用のMARU(旧AIJ投資顧問、負債1313億円)が破産を申請し、負債1000億円以上の大型倒産が3カ月ぶりに発生。12月末には船舶運航管理のラムスコーポレーションがグループの船舶保有会社38社と同時に会社更生手続きの開始決定を受け、負債合計(39社)が約1400億円に膨らむなど、大型倒産が相次いだ。倒産件数も12月は9カ月ぶりに前年同月を上回ったが、東京商工リサーチは「12月だけでは潮目が変わったかどうかの判断はつきにくく、今後の推移を見る必要がある」としている。
アベノミクスによる異次元の金融緩和は円安・株高をもたらし、輸出採算を好転させた。一方、円安は輸入コストを上昇させるマイナス要因として働くが、2015年は原油価格や鋼材価格が下落した。いまのところ、円安が必ずしもコスト高に直結しているわけでもなさそうで、円安関連の倒産は151件と前年比46.4%減少した。
政府は「アベノミクス効果」PRするが、先行きは不透明
一方で気になるのは、中国景気の減速に伴う「チャイナリスク倒産」だ。2015年9月には第一中央汽船が貨物の需要減少で1196億円の負債を抱えて倒産するなどした結果、チャイナリスク倒産は76件と前年の46件から1.6倍に増えた。中でも、中国国内の人件費の上昇や為替変動で輸入費用が増大し、コスト高で倒産したケース(55件)が目立つ。東京商工リサーチは「新興国経済の減速懸念や中東問題も無視できない」と、先行きの不透明感を指摘している。
円安効果と原油安で、2015年の企業収益は過去最高水準となり、倒産件数の減少と並び完全失業率も3%台前半で推移するなど、日本経済は好データを挙げている。倒産件数の減少と失業率の低下を、政府はアベノミクス効果とPRするが、企業の史上最高益は「円安と原油安の下駄を履いた結果」(エコノミスト)との指摘もある。賃金が上がらず、物価だけ上昇する円安は「個人消費にはむしろマイナス」との懐疑論も高まっている。