メインスタジアムの建設問題で揺れる2020年の東京五輪・パラリンピックに、さらに悩みの種が増えそうだ。世界反ドーピング機関(WADA)の第三者委員会が国際陸上連盟(IAAF)の汚職について調査した報告書で、日本が五輪誘致のために国際陸連の主催大会に500万ドル(約5億8000万円)の協賛金を支払っていたと指摘したのだ。
日本側は事実関係を否定しているが、この行為は贈賄にあたるという指摘もあり、AP通信は、国際オリンピック委員会(IOC)が調査に乗り出す可能性もあると報じている。
票と引き換えに大会への協賛もちかける
2016年1月14日に公表されたWADAの報告書では、国際陸連で汚職が「横行していた」と非難。この汚職はラミーヌ・ディアク前会長が主導していたと指摘している。ディアク氏は、ドーピング違反をもみ消す見返りにロシアの陸上選手から賄賂を受け取ったとして、15年11月からフランスの司法当局が捜査を進めている。
WADAの報告書には、日本に関する記述も含まれていた。IOCのメンバーでもあったディアク氏は2020年五輪・パラリンピックの候補都市に、自らの票と引き換えに国際陸連主催の大会への協賛をもちかけた。報告書では、イスタンブールが協賛を拒否したのに対して東京は協賛金を支払ったため、ディアク氏はイスタンブールの支持をやめたと指摘している。
こういった疑惑は、ディアク氏の息子がトルコ人選手のドーピング違反をもみ消そうとした疑惑を調査する際に、トルコ側からの証言として浮上した。この協賛金が実際に支払われたかや、「いつ、誰が支払ったか」、この協賛金が招致成功の決め手になったかどうかは分からない。
ただ、AP通信はこの疑惑を1月16日(日本時間)に「賄賂疑惑」という見出しで、IOCが疑惑の内容や文脈を確かめるために「すでに資料の提出を第三者委員会に依頼した」と報じている。
遠藤五輪相「ちょっとその話は、信じがたい思い」
遠藤利明五輪担当相は1月15日の記者会見で、協賛金が支払われていたかどうかについて、
「私は招致活動をやっていたが、あの当時から最もクリーンな活動をしているという評価をいただいていると思っていたので、ちょっとその話は、信じがたい思いがする。私はないだろうと思っている」
などと述べ、疑惑を否定。日本政府として調査を進めるかどうかについては、
「まだ報道の段階なので、少し状況を聞いた上で」
と述べるにとどめた。