「野良猫への餌やりを原則禁止とする」条例も
こうした飼育基準が導入される背景には、野良や放し飼いの猫による「地域トラブル」の問題がある。13年8月に同様の条例を施行した新潟市の動物愛護センターは、
「市民から寄せられる苦情のほとんどが、猫によるトラブルです。苦情の内容を見ると、糞尿被害や鳴き声による騒音を訴えるものが目立ちます。また、猫が畑などを荒らし、作物などに被害を与えるケースも少なくありません。我々としても『屋内飼育』や『不妊・去勢手術』の呼びかけは以前から続けていましたが、条例が施行されて以降は、より強く『指導』することが可能になりました」
と語る。
猫と地域をめぐる問題の解決はそう簡単ではない。15年8月に和歌山県が「野良猫への餌やりを原則禁止とする」条例改正案を発表したことがあった。猫に関する苦情や殺処分数が多いことを受け、野良猫の無秩序な繁殖を防ぐ目的で作成されたものだ。
しかし、県がこの改正案についてパブリックコメントを募集したところ、「野良猫を餓死させようとするのか」などと批判的な意見が殺到。県は15年11月に、「衰弱した野良猫への餌やりや、継続しない1回の餌やりなどは認める」とした修正案を改めて発表している。
実は、話題を呼んだ和歌山県の改正案にも、新たに猫の屋内飼育を努力義務とする記載があった。和歌山県食品・生活衛生課によると、寄せられた意見の多くは野良猫への餌やりに関するもので、屋内飼育について反対する声はほとんどなかったという。