宮内庁が皇室関連報道について反論する文書を約1年ぶりにウェブサイトに掲載した。報道内容は「事実無根」で「即時撤回」を求めるという強い調子の文章なのだが、天皇陛下のご発言を具体的に紹介しながら記事内容を否定。これに加えて、皇太子さまや秋篠宮さまも報道内容を否定する発言をしたという異例の内容が話題になっている。
抗議の対象になったのは、2016年1月14日発売の「週刊文春」1月21日号の記事。皇后陛下と雅子さまが別室で2人きりで会話したという内容で、新聞広告には「美智子さまが雅子さまを叱った!」の大見出しが躍った。文書によると、天皇陛下はこの新聞広告をご覧になり、侍従長が記事の概要を説明すると、非常に驚いた様子だったといい、そこで陛下が発言されたというのだ。
文春「すべての事情を知る千代田関係者の証言」
宮内庁が抗議の対象にしているのは、「12月23日天皇誕生日の夜に『お呼び出し』 美智子さまが雅子さまを叱った!」と題された記事。
記事では、15年12年23日の天皇誕生日に行われた天皇一家の会食後の様子を報じている。会食では天皇皇后両陛下、皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻、黒田清子さん夫妻の計8人がテーブルにつき、食事が終わった後の様子を「すべての事情を知る千代田関係者」の証言として掲載している。
「皇后陛下と雅子さまは、別室に移られて、お二人だけでお話をされたのです。じつは皇后陛下はひと月ほど前から『お呼び出し』の機会を窺っていらしたのです」
記事では、この「千代田関係者」が、2人きりの会話の場を持った理由を
「皇室における『皇后のお役目』を、ご自分はどのように果たしてこられたかを直接、伝えようとされたのです」
と解説している。
天皇陛下「あり得ないこととしか思えないが、何があったのか」
たが、宮内庁が翌1月15日に発表した文書では、皇后さまと雅子さまが別室で2人きりで話をしたという事実は「全くなく」、報じられた2人の間のやり取りも「一切なされておらず、全くの事実無根」だと主張。週刊文春側に強く抗議した上で記事の即時撤回を求めたとしている。この文書が異例なのが、週刊文春の報道に関する天皇ご一家の反応が細かく書かれている点だ。
「文春」が発売された1月14日の全国紙朝刊各紙に掲載された週刊文春の広告には、大きなスペースを取って
「12月23日天皇誕生日の夜に『お呼び出し』 美智子さまが雅子さまを叱った! 宮中重大スクープ」
「東宮と共に人々の前に姿を見せるのが最善の道です。小和田家とは文化が違うのですから」(美智子さま)
「心に刻みつけるようにいたします」(雅子さま)
といった文言が並んだ。天皇陛下はこの広告を見て侍従長に
「このような広告は一つ一つ気に留めることはないが、自分の誕生日のこととされ、自分にはあり得ないこととしか思えないが、何があったのか」
と「ご下問」になった。侍従長が記事の内容を説明したところ、「非常に驚かれ」たという。その上で、記事で指摘された会食後の様子について、天皇陛下は
「皇后陛下は終始ご自身と一緒におられたので、皇后陛下と皇太子妃殿下がお食事が終わった後に別室に移られて話をされたというような状況は全く起こり得ないことであり、そのことは当夜同席した全員が承知のはず」
だと述べたという。
皇后さまも「誤解を招きかねない多くの記事」に対して沈黙を守ってきたが...
宮内庁長官は、記事に関する事実関係を東宮職にも問い合わせた。これに対して「皇太子殿下からも同様の主旨のお話」があったという。翌15日には、長官が秋篠宮さまと面会する機会があり、その場でも秋篠宮さまは
「皇后陛下はこの夜終始一同の談らんの中にいらした」
などと説明したという。
さらに、文書は、皇后さまの意向についても言及している。皇后さまの具体的な発言内容を伝えているわけではないが、
「皇后陛下は、これまでも皇太子妃殿下を気づかわれ、自らには誤解を招きかねない多くの記事に対しても沈黙を保ってこられましたが、今回の記事は皇后陛下のお言葉という形で表した具体的内容を伴ったものであり、非常に誤解を招く恐れが多いと考えられたことから,ここに当夜の事実をお伝えすることにしました」
と記している。
こうした宮内庁の反論に対して、週刊文春は「記事には十分自信を持っています」とのコメントを出している。