見ず知らずの外国人を自宅に泊めてやらない人間は、排他的で冷たいのか――。
2016年1月15日放送のバラエティー番組「ネプ&イモトの世界番付」(日本テレビ系)で、マレーシア出身の女性ヒッチハイカーが「宿泊先」を求めて5時間以上も寒空の下をさまよう様子が取り上げられた。
舞台となったのは福島県郡山市。結局のところ、とある男性が宿泊を了承したため、番組は「いい話」として取り上げた。しかし、この男性が番組の放送後に「郡山市は日本で類を見ない閉鎖的な心をもつ街だ」といった意見をSNSに投稿し、「いい話」は一転、ネット上で大きな批判を集めることになってしまった。
「閉鎖的な郡山が本当に大嫌いです」
話題となっているのは、番組の人気企画「NIPPON 優しさ旅」での一幕。この企画は、マレーシア出身の女性アーティスト・アイリスさん(23)が、ヒッチハイクやホームステイを繰り返して、北海道から沖縄まで日本縦断を目指すというものだ。
15日の放送では、福島県郡山市に到着したアイリスさんが、1泊のホームステイを受け入れてくれる地元の人間を探すことになった。番組のルールで、ホテルや旅館といった宿泊施設を利用することが禁止されているためだ。通行人に対し「今晩泊めてください」と声をかけ続けるアイリスさんだが、なかなか泊めてくれる人は見つからない。
5時間以上にわたり30組以上に宿泊を頼み込むも全て断られ、野宿すらも覚悟するアイリスさん。そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは、地元出身の写真家・鈴木心さん(35)だった。自身が人に貸しているという家の1つに、彼女を泊めるように取り計らったのだ。
ついに宿泊先が見つかり、喜びのあまり涙が止まらないアイリスさん。そんな彼女を、鈴木さんは「頑張ったねと」優しく抱きしめる――。そんな「いい話」で終わるはずだった1シーンが、番組放送後に鈴木さん本人がSNSに投稿した文章をきっかけに、ネット上で大きな批判を集めることになってしまった。
鈴木さんは16年1月16日、ツイッターに「僕がやさしいのではなく、郡山市が日本で類を見ない閉鎖的な心をもつ街なだけだと思います」と投稿した。さらにフェイスブックでも、
「今回の放送で郡山の閉鎖的な一面が可視化された」
「(郡山市の人間は)ヒッチハイカーに対しても、街への来客ではなく『あんた誰だよ』と排他的にとらえがち」
「郡山に生まれ育った事にはとても感謝しています。でも同時に閉鎖的な郡山が本当に大嫌いです」
などと、地元に対する苦言を連発したのだ。
「市長はクレーム入れるべき」
ただ、こうした過激な意見の背景には、鈴木さん自身が震災後に実施してきた復興活動のなかで、地元の人間から排他的な反応を受けてトラブルになった経験があったためだと説明している。最終的には、今回の放送を「今後市民として、どういった行動が適切なのかを考察する機会」と捉えるべきだと提言している。
この投稿に対してネット上には、
「カメラマンとかスタッフ数人もズカズカ家に上がりこませて しかも撮影までされてテレビで好き勝手に放送されることを許諾する一般家庭がそこかしこに居るわけねーだろ」
「30組の家庭に善意を強制して、断られたら『郡山は日本でも類稀なる冷たい市』って怒っちゃうの?郡山市民に対して、それはあまりにも冷たいんじゃないの?」
「これは郡山市民怒っていい。市長はクレーム入れるべき。なんの根拠もない。意味の無いヒッチハイクで善意に頼って番組作ってるのがそもそもねぇ...」
など批判的な書き込みが相次いで寄せられ、いわゆる「炎上」状態となってしまった。
そもそも、アメリカの多くの州などでは、犯罪に繋がる危険性が高いとして「ヒッチハイク」を法律で禁止している。また、国内でも解禁の動きがある「民泊」に関しても、その「危険性」を指摘する声も出ている。ネット上には、こうした背景を軽視した番組制作側の姿勢を非難する意見も少なくない。