2016年からドジャースで投げる前田健太の評価があまり高くない。大リーグの厳しさなのだろうが、どんな事情が潜んでいるのか。
「8年契約、年俸総額2500万ドルプラス出来高」。これが、前田が交わした条件である年俸は日本円で約29億円。年平均にすると3億6000万円ほどだ。広島に在籍した前田の昨年の年俸は3億円だった。最多勝を取り、沢村賞に選ばれた力からすると、さほど驚く数字ではない。広島に残留すれば、おそらく5億円投手になっただろう。
「身体検査」結果が影響した可能性
ドジャースとの契約を、さすが大リーグ、と受け取ったファンが多かったのではないか。
いくらいい投手でも、大リーグでまだ1球も投げたことのない投手に、8年間を保証するような契約はまずありえない。投手は精密機械みたいなものだからちょっとした故障で使い物にならなくなる。
一つの例としてレッドソックスと6年契約した松坂大輔がある。右ヒジを痛め、最後はローテーションから外れた。
前田の契約はオプションだらけだと推測できる。最初の3年間ぐらいは完全雇用だろうが、以後の対応は球団か前田の選択権となっているはずで、詳細内容は明らかになることはないと思う。
前田で気になるのは、身体検査で「右ヒジに問題あり」と分かったことで、それが年俸に影響したようである。
そして現実の登板の懸念である。前田は日本では「中6日の登板間隔」で投げていた。ドジャースでは「中4日」になる。先発陣は5人だからで、これは前田にとって初めての経験だ。
この中4日は日本のプロ球界から大リーグに行った投手がぶつかる壁である。最近ではダルビッシュ有、田中将大も対策に苦慮していた。開幕当初はなんとかクリアしても、疲労が出てくる夏場に変化が表れてくる。
その対策としてどのチームも開幕してからしばらくは、イニング数ではなく、投球数で交代させる。60球、80球、100球というふうに、シーズンが深まるとともに増えていく。その日の調子で球数を増やすことはほとんどない。
「中4日」ローテーション対応がカギ
日本で投げていた投手はベスト状態で開幕を迎える調整をする。ところが大リーグは徐々に調子を上げ、夏場のベストを目指していく。そうしないと1シーズンを投げ抜くことができないからである。
それをやってのけた日本人投手は、最近では14年のヤンキース時代の黒田博樹(広島)だった。先発陣でただ一人、年間ローテーションを守り抜いた。
「(中4日には)しっかり調整して対応したい。コーチと相談してなんとかクリアしたいと思っている」
前田の決意である。現時点では、先発陣の右腕は前田一人。3番手としての登板予定だ。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)