職人が「素手で寿司を握っていた」ことを理由に、米ニューヨークの人気寿司店が営業停止を命じられた。市の衛生基準で、「生の食品は素手で扱ってはならない」と定められているためだが、現地の寿司職人からは反発の声が上がっている。
この騒動は日本のネット上でも議論を呼んでおり、「手袋なんて無粋だ」と市の対応に批判的な声が相次いでいる。しかし、国内を見れば、回転寿司チェーン店を中心に「ビニール手袋」や「ロボット」を導入する動きが進んでいる。素手の「伝統」を重視するか、それとも「衛生」に重きを置くか――。その在り方を巡っては、国内でも様々な動きがみられる。
「生魚を食べる文化や歴史のない国の人が理解するのは難しい」
NYの地元紙「デイリー・ニューズ」には、現地の寿司職人による「手袋を脱ぎ捨てろ 寿司のために戦え」と題した抗議文が掲載された。手袋の着用を義務付ける市の衛生基準は「寿司」という食文化を脅かしていると主張しており、寿司にとって素手での調理は必要不可欠だと主張している。
この抗議文は大きな反響を呼んだようで、現地の日本語新聞では一面で取り上げられた。この騒動を複数の国内メディアが取り上げたことで、海を越えて日本のネットユーザーの間でも議論を呼ぶことになった。
「手袋なんて無粋過ぎる」「ゴム手袋で握られた寿司を食べたいとは思わない」といった声が目立つなか、「俺は手袋賛成だな」「手袋あった方が気持ち良い」という意見も少なくない。
こうした騒動について、現役の寿司職人はどう考えているのだろうか。「ミシュランガイド東京2016」で1つ星を獲得した東京・下北沢の寿司店「福元」の職人はJ-CASTニュースの取材に対し、「安全を考えれば、仕方のない動きでしょう」と語る。
「海外の寿司店は、日本人が経営するお店ばかりではありません。私から言わせれば、生魚を食べる文化や歴史のない国の人間が、正しい衛生観念を理解して寿司を握るのは難しいと思います。それだけ、生の食材を生のまま提供することは難しいのです」