「資産売却の話はやめてくれ」と、筆者に「忠告」
ただし、各省の抵抗は大きく、小泉政権が終わると、資産のスリム化は尻つぼみとなって、政府関係法人、つまり天下り先の抜本的な民営化や証券化は行われず、貸付額の減少となるだけだった。要するに、政府資産を「売れないものばかり」という人は、「売らせない」ことを擁護しているだけだ。
この過程で、筆者には役人や役人OBからさまざまな忠告があった。その一つで忘れられないのが、「借金が多く財政危機なんて思っていないから、資産売却の話はやめてくれ。オレの将来がかかっている」
財務省やその関係者が「借金1000兆円あるから、増税」というとき、資産、つまり天下り先は温存するという前提だ。もし、資産売却するつもりなら、資産を差し引いたネット債務額500兆円というはずだ。さらに、日銀を含んだ連結ベースの200兆円といってもいい。
日頃天下り問題に敏感なマスコミが、天下り先を温存する前提である借金1000兆円と言っているのは、不思議でならない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)、「世界のニュースがわかる!図解 地政学入門」(あさ出版)など。