「仮想通貨規制」に重い腰を上げる金融庁 「通貨ではない」との見解が一転した理由

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   金融庁は2016年、「ビットコイン」などインターネット上の仮想通貨に対する規制に乗り出す。仮想通貨の取引所を登録制とするほか、金融庁が業務改善命令などの行政処分を出せるようにすることが柱だ。

   マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与といった犯罪利用を防ぐとともに、利用者を保護する狙いだが、国際的な規制強化の流れに押され、ようやく重い腰を上げた。

  • 仮想通貨は世界で犯罪の資金洗浄やテロ資金にも利用されていると指摘される
    仮想通貨は世界で犯罪の資金洗浄やテロ資金にも利用されていると指摘される
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「IS」の資金調達の可能性浮上が転機

   2015年12月17日に開かれた金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会が、仮想通貨に関する規制の枠組みを盛り込んだ最終報告書を大筋で了承した。報告書によると、仮想通貨の取引所(交換業者)は金融庁への登録が義務づけられ、資金洗浄を取り締まる「犯罪収益移転防止法」の対象事業者として、顧客の口座開設時の本人確認や疑わしい取引の届け出が義務化される。

   世界最大のビットコイン取引所だった「マウントゴックス」が経営破綻した事件を踏まえ、利用者保護のため、取引所に対して、顧客から預かった資金と自らの資産の分別管理や、財務の健全性確保を求めるほか、監査法人などによる外部監査も義務づける。金融庁が取引所に検査に入れるようにし、業務改善命令や業務停止命令などの行政処分も発動できるようにする。政府は2016年の通常国会に関連法の改正案を提出する方針だ。

   しかし、「マウントゴックス」が2014年に経営破綻した当初、政府の動きは鈍かった。政府はビットコインについて「通貨ではない」との見解を示し、監督官庁がどこかさえあいまいにしたまま、問題を先送りした。

   ところが、イスラム系過激派組織「IS(イスラム国)」がビットコインを資金調達や決済に利用している可能性が強まったことなどが指摘され、潮目が一変した。テロ資金対策を話し合う国際機関、金融活動作業部会(FATF)は2015年6月、加盟各国に仮想通貨の取引所に対する法規制を求める報告書を公表。国際的な規制強化の流れが決定的になる中、麻生太郎副首相兼財務相・金融相は8月の記者会見で「正直、これが通貨なのか」と金融当局による規制の必要性に懐疑的な考えをにじませつつ、「検討は進めていかなければならない」と法規制を進める方針に転じざるを得なかった。

「規制」と「利便性」 二兎を同時に追えるか

   仮想通貨に対する規制を業界の自主的な取り組みに任せてきた日本は、過去にFATFから、テロ資金対策について「多くの深刻な不備を改善していない」と厳しく指弾されたこともある。

   法規制が強化されれば、政府や中央銀行のお墨付きがない代わりに、国境を越えて瞬時に決済できる仮想通貨の利便性が低下するとの指摘もある。だが、日本では法規制がないがゆえに仮想通貨に対する信頼性が高まらず、普及が進まないという面も強かった。特に、マウントゴックスの事件で多くの利用者が資産を失ってからは、仮想通貨に対する「負のイメージ」が高まった感は否めない。

   一方で、ITを活用した金融サービスの世界的な台頭を背景に、仮想通貨は技術革新や産業振興につながる可能性も秘めている。政府はテロ資金対策など法規制を着実に進めつつ、仮想通貨をめぐるビジネスチャンスの拡大や利便性の向上も図るという難しいかじ取りを迫られる。規制だけでなく、IT金融サービスでも日本の出遅れが目立つ中、政府の今後の戦略が問われる。

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