2015年12月、10万人以上が参加する医師専用コミュニティーサイトの「メドピア」が、「医師が太鼓判! 冬の健康のために摂(と)りたい野菜は?」というアンケート結果を発表した。そこで断トツの1位に輝いたのがダイコンだ。
確かに、おでんや煮物、おろし、漬物と、主役にも脇役にもなり親しまれているダイコンだが、栄養的には「ダイコン役者」と侮ってはいなかっただろうか。医師が推奨するすごさとは、どこにあるのだろう。
ピリッとした辛みに驚異のがん予防効果
ダイコンは、葉や皮、根のはじまで丸ごと味わう野菜だ。実の部分には、ジアスターゼという消化酵素が非常に多く含まれている。ご飯やパンなどのでんぶんを分解・消化し、胃腸の働きをよくする。胃もたれや胸焼けを防いで、食欲を増進してくれる。
つきたての餅にダイコンおろしを混ぜて作る「ダイコン餅」は、このジアスターゼがでんぷんを分解して出す甘みを利用している。ただ、ジアスターゼは熱や空気に弱いので、おろしにしたらすぐに食べよう。
もう1つ大事な栄養素がある。ダイコンをおろす時に出る、ピリッとした辛み成分のイソチオシアネートだ。この成分は、おろしたり、細かく切ったりして、細胞を壊さないと出てこない。特に、皮や根の先端部分に多くあるので、おろす時は、ぜひ皮をむかないでほしい。というのは、以下のように医師たちが推奨した大変な健康効果があるからだ。
(1)消化液の分泌を促して血中の脂肪の代謝を高める。血液がサラサラになり、動脈硬化を予防する。
(2)抗酸化力が強く、免疫能力を高めて、がんを予防する効果がある。
(3)ウイルスや細菌と戦う白血球を活性化させる。殺菌作用が強く、風邪やインフルエンザを防ぐ。昔から、「発熱や頭痛、歯茎の腫れ、のぼせの時はダイコンのおろし汁を飲め」といわれたのはこのためだ。また、胃の中のピロリ菌を退治してくれるので胃がんの予防も期待できる。
皮と葉っぱは捨てないで活用を
ダイコンの皮には、ビタミンCとビタミンPが豊富にある。その量は実の中の2倍以上なので、皮は捨てずに使いたい。ビタミンCは、皮膚の老化を防ぎ、シミ・ソバカスを防止して美肌効果があるばかりか、体の抵抗力をつけるのに欠かせない栄養素だ。ビタミンPは、ミカンなどの柑橘類の皮にも多く含まれているが、毛細血管を丈夫にする働きがあり、脳卒中を防いでくれる。
そこで、ミカンとダイコンの皮を細切りにした「ミカンとダイコンの3杯酢」が、オススメ料理だ。また、ダイコンの皮を厚めにむいて拍子木切りにし、ハチミツと一緒に瓶につける「ダイコンハチミツ」が、のどの痛みや風邪、飲み過ぎの時に効果があるので、ためしてはいかが。
葉も捨てないで活用したい。葉の部分には、ベータカロテン、カリウム、カルシウム、ビタミンCが多い。みそ汁の具にしたり、甘辛く煮てふりかけにしたりして味わうとおいしい。
切り干しダイコンがすごすぎる!
実はダイコンを数十倍パワーアップした食べ物がある。切り干しダイコンだ。ダイコンを細く切り、天日で干して乾燥させるので、栄養がギュッと凝縮されている。そのすごさたるや、同じ量のダイコンに比べ、カルシウムが15~20倍、鉄分が32~49倍、ビタミンB1・B2が約10倍、リンが12~15倍、食物繊維が10~16倍である。
特に、カルシウムは野菜の中では一番多く、牛乳の5倍。食物繊維も海藻類に匹敵して、ゴボウの3倍以上だ。カルシウムは骨や歯を丈夫にするし、食物繊維はコレステロール値を下げ、動脈硬化を防ぐ。また便秘を改善し、大腸がんを予防する。胃や腸の中で水分を吸収して膨らむので満腹感を得られので、ダイエット効果もある。
太陽の光を浴びて糖化したため、甘みが増している。また、ダイコンにはないリグニンという食物繊維が加わった。リグニンは、セルロースとともに木材の構成成分の20~30を占め、しっかりした細胞壁を作る働きがある。家の建築材料でいえばコンクリートにあたる成分だ。
「どこまですごいんだ! 切り干しダイコン!」とほめてあげて、積極的に料理に取り入れたい。特にダイエットや美肌を目指す女性には、みそ汁の具にしたり、サラダに入れたり、ハリハリ漬けにしたり、お茶代わりに飲んだりするのもオススメだ。