三菱重工で相次ぐ大型案件「納入延期」 巨大製造業に何が起きているのか

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大型客船では1600億円の特別損失

   一方、三菱重工が客船世界最大手米カーニバル傘下の「アイーダ・クルーズ」向けに長崎造船所(長崎市)で建造中の大型客船は、2015年12月の納入予定に間に合わなくなった。2011年にアイーダ向け大型客船2隻(いずれも約12万5000総トン、3250人乗り)を受注し、1番船は2015年3月に納入予定だったが、設計や資材の変更などで2度延期し、12月にずれ込んだ挙句、さらに年を越した。内装の仕様変更などへの対応が理由という。

   受注額は2隻で1000億円とみられ、収益どころか、既に累計1600億円超の特別損失を計上した。3度目の延期に加え、2番船についても納期の2016年3月から遅れる見通しといい、さらに損失が膨らむ恐れもある。

   一般商船では、中国や韓国などとの価格競争が激化して採算の悪化が続き、付加価値が高い客船で造船事業の収益力を上げる戦略だが、第1弾のもたつきとあって、今後の事業展開を危ぶむ声が業界ではささやかれている。

   さらに、フランス原子力大手アレバと、その中核子会社で原子炉製造を手掛けるアレバNPへの出資問題もくすぶる。アレバとは2006年に原子力機器事業で提携し、トルコやベトナムなどへの原発売込みで協力している。しかし、アレバは2014年12月期まで4期連続の最終赤字を計上していることから、同じ加圧水型原子炉(PWR)技術を持つ三菱重工にアレバNPへの出資を要請してきている。世界の原発売込みでの協力に加え、原子力大国フランスでのビジネスチャンス拡大の期待がある半面、アレバ再建には時間がかかるとみられることがネックになっている。また、アレバは中国の原発関連企業にも出資を求めており、双方が出資となれば、「中国への技術流出懸念も出てくる」(大手紙経済部デスク)など、出資をためらう理由にも事欠かない。

   いまのところ、こうしたマイナス面がにわかに経営の屋台骨を揺るがすことはないと見られる。2016年3月期の売上高見込みは前期比5%増の4兆2000億円と巨額で、経常利益も9%増の3000億円と従来からの予想を維持している。上半期は交通・輸送部門の利益が拡大し、防衛省向けの航空機などを手掛ける防衛・宇宙部門も増収増益、米ボーイング向けの航空機部材の販売増や円安効果も利益を押し上げてはいる。

   しかし、日本を代表する製造業の苦境が相次ぐ中、三菱重工にも死角が全くないとは言い切れない。

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