ソウルの日本大使館前に設置されている問題が、日韓首脳間でも尾を引いている。安倍晋三首相と朴槿恵大統領が北朝鮮の水爆実験を受けて行った電話会談で、朴大統領が慰安婦問題をめぐる合意について「合意の精神に合わない言動」が報道されているとして不快感を示した。この「言動」とは、像の移転が合意の前提になっていると日本で報じられていることを念頭に置いているようだ。
どういう訳か、大統領発言は韓国側からしか発表されていない。韓国世論は像の移転には猛反対で、合意自体にも反対する声の方が多い。こういったことを背景に、韓国政府が念を押さざるを得ないほどに報道に神経をとがらせている様子がうかがえる。
日本側の発表は前向きな印象を与える文言
日本側の発表によると、電話会談は2016年1月7日16時40分頃から、約15分間にわたって行われた。両首脳は北朝鮮への対応で緊密に協力していくことを確認し、慰安婦問題についても、
「両者は、先日の慰安婦問題についての合意があったからこそ、こうした重要な機会に日韓の首脳間で緊密に連携することができるとの点で一致しました。さらに、両者から、本年を日韓の新時代のスタートの年にしたいとの発言がありました」
と発表されている。総じて前向きな印象を与える文言だ。
韓国の大統領府(青瓦台)の発表でも、北朝鮮の核問題への対応で緊密に協力していくことで一致したという点は同じだ。慰安婦問題では、朴大統領は
「両国関係の好循環的発展のために合意事項の誠実な履行が重要」
と述べたという。だが、そのすぐ後には日本側の発表にはなかった内容が続いている。
「朴大統領は、特に、メディアを介して合意の精神に合わない言動が報道され、被害者が傷つかないように十分に留意しながら、よく管理していくことが重要であるとしながら、そうした言動は合意を通じた問題解決に何の助けにもならないと強調しました」