不適切会計問題で2248億円の利益水増しが明らかになった東芝が大規模なリストラに乗り出した。テレビやパソコンの国内開発拠点を閉鎖し、インドネシアのテレビ工場なども売却することを決定。
グループ全体の約5%に当たる1万600人の人員削減も進める。利益水増しの陰で不採算部門を温存したツケが、今になって吹き出した。
過去最大の5500億円の赤字
「『新生東芝』として再生するには、構造改革を2015年度中に実施することが必須だ」。2015年12月21日に記者会見した東芝の室町正志社長はこう語り、徹底したリストラを早急に断行する考えを強調した。実際、この日打ち出したリストラ策は、従来よりも踏み込んだ内容が目立つ。テレビとパソコンの開発拠点である東京都青梅市の青梅事業所は閉鎖・売却し、家電部門全体で6800人の人員を削減すると表明。半導体部門では白色LED事業からの撤退などで2800人を削減し、本社の管理部門は全体の1割に当たる1000人を減らす。
こうしたリストラ関連費用も盛り込むことで、東芝は2016年3月期の純損益が5500億円の赤字に転落するとの業績予想も発表した。世界的な金融・経済危機に発展したリーマンショック直後の2009年3月期(3988億円の赤字)を上回り、赤字額が過去最大に膨らむことになる。室町氏は「構造改革を断行し、来年度でV字回復を目指すことが私の最大の責務」とも付け加えた。
当面は人件費など固定費を削減することで財務体質の強化につなげる考えだが、ここまで業績が悪化したのは歴代経営陣の責任が大きい。同業では、日立製作所も2009年3月期に7873億円と過去最大の赤字を計上した。しかし、日立は大規模な人員削減や事業撤退を重ね、今では鉄道などインフラ関連事業などを柱にした日本有数の優良企業に生まれ変わった。この間、東芝は利益水増しを行う一方、リストラは中途半端に終わった。東芝の会見では「他社と比べ、なぜ構造改革が遅れたのか」などの厳しい質問も飛んだが、室町氏は「経営者として深く責任を感じている」と答え、V字回復を誓うしかなかった。
「虎の子」の中核子会社も売却
ただ、大規模なリストラを実施したからと言って、業績を回復できるかは見通せない。不適切会計問題を受け、東京証券取引所は東芝を「特設注意市場銘柄」に指定。問題企業として投資家に注意を呼びかけたわけで、東芝は当面、市場からの資金調達が十分に行えない公算が大きい。
一方、巨額の赤字計上により、株主資本は2015年3月期末の1兆840億円から、2016年3月期末には4300億円へ大幅に減少する見込み。東芝は業績堅調なヘルスケア部門の中核子会社、東芝メディカルシステムズの売却も発表したが、成長事業に位置づけていた「虎の子」企業を手放すことになったのも、東芝の苦境の裏返しと言える。
東芝は今後、原子力発電などエネルギー事業、半導体の「ストレージ」事業に経営資源を集中させる方針だ。しかし、原発は東電の原発事故以降、新規建設を受注できておらず、市況の変動が激しい半導体も安定的な収益を上げるのは容易ではない。東芝の経営の先行きには、いまだ暗雲が厚く垂れ込めている。