世界経済の変調が日本経済に波及するリスクが
しかし、これが今後も持続ずる保証はない。2016年度の税収見通しは、政府が12月22日に閣議了解した2016年度の政府経済見通しに基づいている。国内総生産(GDP)の成長率は、物価変動の影響を除いた実質で1.7%、物価変動を反映させた名目では3.1%と予測した。しかし、過去20年で名目成長率が3%を超えた年度はない。2016年度の名目3.1%成長は2017年4月の消費税率10%への引き上げ前の駆け込み需要で成長率を0.3%押し上げるとの効果も織り込んでいるとはいえ、「名目3%はあまりに楽観的」(アナリスト)との見方が多い。
国内では円安誘導で株高を支え、法人税減税と引き換えに大企業に賃上げを求めるとはいえ、賃上げは広がりを欠き、個人消費に力強さはない。軽減税率の導入で不足する税収1兆円のうち、6000億円の財源確保は議論を持ち越すなど、税収をめぐる不確定要素が残されている。
世界経済は成長のエンジン役の中国経済が減速しているうえ、米国の利上げに伴う新興国経済の下振れリスクがあるなど不安定感を増している。世界経済の変調が日本経済に波及すれば、税収が期待通り伸びず、アベノミクスは足元から揺らぐリスクをはらんでいる。