年末年始にかけて、走行中のバスやクルマから突然火が出る車両火災が相次いでいる。
バッテリーのチェックをはじめ、日ごろの点検整備が重要で、とくに久しぶりの長距離運転や電気系統に負荷がかかりやすい冬季の運転は発火のリスクが高まるようだ。
古い大型バス増え、国交省が事故防止徹底を緊急指示
年の瀬の2015年12月28日朝、東京・池袋で大型観光バスが炎上した。バスの運転手から「車内が燃えている」と110番通報があった。およそ20分後に火は消し止めらたが、バスの屋根は骨組みを残して焼け落ちた。
長崎県雲仙市ではその翌29日昼ごろ、そば店駐車場で止まっていた大型観光バスから出火。昼食後、運転手が出発のためエンジンをかけた直後、「ボン」という爆発音とともにトランクルームやバッテリーがある中央部の車体下部から火が出たという。
乗客乗員28人のうち、運転手を含めた9人が車内にいたが、避難して無事だった。
立て続けに起こった大型バスの火災に、国土交通省は30日、日本バス協会に対してバスの車両火災事故の防止を徹底し、万全を期すよう緊急の指示を出した。
ところが、2016年1月4日朝には北海道札幌市の路上で、スイミングスクールの合宿に向かう途中の大型バスが突然、炎上した。火は1時間ほどで消し止められ、乗っていた小学生など12人は全員無事だった。
この年末年始、大型バスだけで3件の車両火災が相次いだ。なかでも池袋での火災について、国交省自動車局は「あれほど大きな火災はめずらしい」と漏らす。
国交省によると、池袋のケースはなんと天井の蛍光灯が火元だった。詳細な原因は「警察とともに引き続き調査中です」と話しているが、火元の蛍光灯から天井をつたい、また座席に引火して広がったと推測される。
総務省消防庁によると、2014年に起った車両火災(乗用車、放火やたばこの不始末を含む)は1445件。15年1~6月は673件だった。
バス(事業用)に限れば、車両火災はここ数年、年間15件程度で推移。「2014年は前年と比べてやや増えましたが、ほぼ横ばいです」という。
ただ、円安による訪日外国人の増加や中国人観光客の「爆買いツアー」などを受けて、大型バスの需要は旺盛で、最近は供給が追いつかないほど。そこで車齢(新車登録からの経過年数)の高い大型バスをやむなく稼働させているケースが少なくない。
国交省も「車齢が高いことがあったと思います」との認識で、「日常の点検整備や定期点検を確実に行い、輸送の安全確保に万全を期してほしい」と話している。
出火原因のトップは排気管、ペットボトルが凸レンズ効果も
年末年始にかけて発生した車両火災は、大型バスだけではない。2015年12月29日午後、東京・中央区の勝鬨橋の上で、60代の男性が運転していたイタリアの高級車、フェラーリが出火。走行中に「ボン」と音がして、クルマの後ろから煙が出ていたという。乗っていた男性2人にケガはなく、火は約50分後に消し止められた。
また、翌30日午後には神奈川県小田原市蓮正寺の小田原厚木道路下り線で、医師の男性が運転するイギリスの高級車、ジャガーから火が出て全焼した。その男性は「走行中に左の後輪から煙が出ているのを見た」と話しているという。路面の一部はアスファルトが溶けるほど激しく燃えたようだ。
いずれも、警察が原因を調べている。
日本自動車連盟(JAF)によると、「車両火災が発生するケースはさまざま」という。たとえば、ガソリンやオイル漏れに起因するものやエンジンルーム内へのウエス(手入れ用の雑巾)の置き忘れ、ブレーキなどの制動装置に起因するもの、さらにバッテリーのターミナルが緩むことで発生するショートによっても発火の危険性は高まる。
2014年の車両火災(乗用車、1445件)の出火原因のトップは、排気管(634件)だった(消防庁調べ)。
ただ、走行中などとなると、たとえば落下物などが車輪に巻き付いたり引きずったり、タイヤがバーストしたりするケースが想定できる。「そのことだけでは火災に結びつかないのですが、こうした条件が重なり合って発火することはあろうかと思います」とみている。
また、JAFはフロントウインドウにアクセサリーなどをつるす透明の吸盤やペットボトルなどの凸レンズ効果で太陽光が集光され、高温の個所をつくり出して出火することもあると指摘する。
いずれも、年末年始に久々にクルマを運転する際に、こうしたことが起きる可能性がある。