活断層が走り、構造が複雑な南アルプス
土の圧力以上に心配されているのが、山岳内の地下水脈だ。国土に山の多い日本では、山岳部の土木工事のレベルは高いとされるが、いまだ「掘ってみないと分からない」(大手ゼネコン)のが実情だ。それだけに、突然吹き出す水への対応は細心の注意が求められる。活断層が走り、構造が複雑な南アルプス内部で、掘削に携わる人たちの安全を確保しつつ、土や水の圧力をさばかなければならないのだから、想定外の事態によって工事の遅れが発生することは容易に想像できる。
南アルプストンネルは静岡、長野の工区の受注者を2016年中に決める予定だが、契約にいたるまでに工費などをめぐってゼネコンとの交渉が難航することも予想される。また、南アルプス以外でも、地価上昇が続く名古屋駅の工事で地権者との交渉が難題となる。2027年に予定通りの費用で開業するには、さまざまな壁を乗り越える必要がある。