リニア中央新幹線(東京・品川―名古屋)を建設中のJR東海は12月18日、ルート中で最難関とされる南アルプストンネル(総延長25キロ)の起工式を開いた。山岳トンネルとしては日本最長で、工期に10年もかける。2027年開業を目指すリニア建設の肝とも言える場所で、計画通りの費用と時間で完成できるかを占う工事ともなる。
リニアは2014年10月に国の認可を受け、同12月に着工した。工費は品川―名古屋間で5兆5000億円、2045年をめどとする大阪延伸が実現すれば計9兆円余りに上る。リニアは「新幹線」と名前が付き、国の認可を受けているとはいえ、民間企業であるJR東海1社が工費をすべて負担するこれまでに例のないプロジェクトであり、かつ今世紀最大の建設事業とされている。
地価や人件費の高騰が想定以上なら全体の工期を後ずれさせる
品川―名古屋間をわずか40分で結ぶ、しかも運賃は飛行機との競争もあって東海道新幹線「のぞみ」より700円程度高いだけ、というのだからリニア開業でかなり便利にはなる。しかし、当然ながら完成までには数々の難題が山積しており、予定通りに2027年に開業できるかは予断を許さない。JR東海の柘植康英社長は12月9日の記者会見で、「経営の健全性や株主への安定配当に支障が生じるようなことになれば、工事のペースを調整することもある」と述べ、地価や人件費の高騰が想定以上なら全体の工期を後ずれさせる、との考えを明らかにした。
JR東海は借金が雪だるま式に膨らんだ旧国鉄を反面教師とし、リニア建設期間中、長期債務額がピーク時でも5兆円を下回るようにコントロールし、財務体質を安定させることに腐心している。費用が想定よりかさむことによって債務額を含めた計画全体に狂いが生じるならば、工期を伸ばすのは一つの策となる。その間に、運輸収入の9割を占める東海道新幹線で得る利益を積み上げることができるからだ。したがって柘植社長の言う「工事のペースの調整」とは、工期を伸ばすことに他ならない。