米コーネル大学とスミソニアン協会の研究チームが、世界で初めてイヌに体外受精をさせて子イヌを誕生させることに成功し、2015年12月9日付米科学誌「プロスワン」(電子版)に発表した。
研究チームによると、代理ママとなったメスが2015年6月、7匹の子イヌを出産した。生まれたのはピーグル5匹と、ピーグルとコッカースパニエルの交雑種2匹。人間の不妊治療と似た技術で、3組の父母の精子と卵子を体外受精させ、計7つを母イヌの子宮に移植した。
人間とイヌには、共通の病気がほかの動物の2倍ある
人間の体外受精は1978年に英国で初めて成功した。イヌの体外受精も1970年代から研究が進められてきたが、受精のタイミングが非常に難しく成功してこなかった。研究チームは、イヌの排卵の周期が人と異なることに着目、採卵の時期と方法を工夫した。7匹の子イヌは全員元気に成長しており、論文が発表されるまで、存在が伏せられてきた。
コーネル大学のアレックス・トラビス博士は、「この技術を使い、アフリカの野生イヌのリカオンなど、絶滅が心配される野生動物の保護に役立てたい。また、人間とイヌは、ほかの動物に比べ共通の病気が2倍近くあります。イヌの遺伝性の病気だけではなく、人間の病気の治療にも貢献できると思います」と語っている。