2012年、米国の歌手ビヨンセが、長女出産後、たった3か月間で26キロ減のダイエットに成功した時、「いったい何を食べていたの」とメディアは色めきたった。答えは「野菜とキヌア」だった。翌年、国連が「世界の飢餓と貧困を救う奇跡の穀物」にキヌアを指定し、2013年を「国際キヌア年」に選んで大々的にアピール、一躍ブームが広がった。
日本では、いま1つ知られていないキヌアって、いったいどんな食べ物なの?
国連、NASA、ヤンキースまで惚れ込んだ栄養パワー
キヌアの原産地は南米、コロンビアからアルゼンチンにかけてのアンデス山脈一帯だ。紀元前3000年前から栽培され、「穀物の母」と呼ばれて人々の主食になっていた。氷点下の乾燥した高山地帯から40度以上の熱帯雨林地帯まで、どこでも栽培できる。その生命力の強さが、のちに世界の貧しい地域の農業を救うのに役立つと国連に期待されたのだ。
しかし、16世紀にスペインによってインカ帝国が滅びると、小麦の栽培を強制され、キヌアはすたれる。再び脚光を浴びたのは、1990年代になってからだ。NASA(米航空宇宙局)がキヌアの栄養面、取り扱いやすさ、収穫率など様々な点から宇宙空間での長期滞在に最も適した作物として発表、「21世紀の人類の主食」と名付けた。
2013~2014年に2年連続ポストシーズンを逃した米大リーグ・ヤンキースは、チーム改革の1つに放任状態だった選手の食生活改善を打ち出し、チーム専属の管理栄養士を雇った。その栄養士が選手用食堂に真っ先に置いたのがキヌア入りのサラダやオートミールだ。