「新国立」の当初比半額工費の要因に
ゼネコン各社は2008年のリーマン・ショック後、受注の激減に見舞われ、少ない案件の安値受注を余儀なくされた。その後、建設工事が回復しても今度は人手不足による労務費の高騰、さらにはアベノミクスの負の側面である円安・ドル高による資材価格の高騰という逆境に直面した。
ゼネコン各社の業績が過去最高益を更新するまでに改善したのは、東京など都心部の再開発案件の増加がある。国や地方自治体による公共事業が増えているわけではないが、JR東海が2027年の開業を目指して2014年末に着工した「リニア中央新幹線」なども含めた民間企業の投資意欲が「かつてなく旺盛になっている」(清水建設幹部)。
足元で円安・ドル高が定着しながらも、中国の鉄鋼などの供給過剰を受けて輸入建設資材費が下がってきたことも、ゼネコンにはまたとない好材料だ。さすがに人件費は高水準にあるものの、「上昇は一服した」(大林組)という。こうしたことを背景に、工事案件が続出することによって、発注者より受注側のゼネコンの立場が強くなる「売り手優位」とも言える現象が起きているという。一部ではまさにバブル期のような現象が起きているのだ。
このように、ゼネコン大手の業績好調を背景に進んでいたのが、東京五輪の新国立競技場の設計見直しだ。結局、「A案」の大成建設が施工業者に選ばれたが、一時は3000億円超とされた総工費を1490億円と半分以下に抑えた。経営が苦しい時なら果たしてこれをできたかどうか。大成建設にとっては、1964年の前回東京五輪のメインスタジアムとなった旧国立競技場の建設を担った業者として、他社には譲れないという意地もあったろうが、業績好調な大手ゼネコン4社の中でも最も多い純利益を確保するという余力に、「採算より名誉」をとることを後押したとの見方がある。
業界全体として、傾いた横浜市のマンションのくい打ちデータ改ざん問題の影響も懸念されるものの、少なくとも2017年3月期については、2017年4月の消費税率10%へのアップに伴う駆け込み需要がマイナス面を打ち消すと見られており、ゼネコンの好調はしばらく続きそうだ。