サッカーのアジア王者・広州恒大(中国)とスポンサー契約を結ぶ日産自動車の中国合弁会社が、チームを相手取り、約3244万元(約6億1000万円)の損害賠償を求める訴訟を中国の裁判所に起こした。
中国メディアが報じ、日産自動車も提訴の事実を認めており、日本国内でも報道され始めた。
キックオフ1分前に変更をメールで通知
提訴した中国合弁会社は「東風日産」。対する広州恒大は中国国内リーグで2011~15年の5連覇を達成した強豪。2015年12月には、7チームが世界一のクラブチームを競う「クラブFIFAクラブW杯」にもアジア代表として出場。サンフレッチェ広島との3位決定戦で敗れはしたが4位になった。
なぜ、蜜月関係にあるはずのチームとスポンサー企業が法廷を舞台に争うことになったのか。広州恒大は胸ロゴにスポンサー「東風日産」の名前が入ったユニホームを使用してきたが、11月21日に行われたアジア王者を決めるAFCチャンピオンズリーグ決勝第2戦で、チームの親会社の傘下にある保険会社「恒大人寿」のロゴが入ったユニホームを着用したからだ。
中国での報道によると、広州恒大はこの試合の何日か前に胸ロゴの変更を申し出たが、東風日産側が拒否。変更には両者の同意が必要だが、広州恒大はキックオフの1分前にメールで変更を通知しただけで、胸ロゴを「東風日産」から「恒大人寿」へと変更して試合に臨んだという。試合後の11月末に東風日産がサイト上で「契約違反だ」とし、法的手続きに移ることを明らかにしていた。
日本企業は「よそなら信じられない話だけど中国ならあり得る」(中国展開する飲料メーカー)、「日本で横浜Fマリノスの胸ロゴが『NISSAN』から『NISSAY』に変わったようなもの」(日産関係者)とあきれ顔だ。
「大事な試合の前に訴えた」
問題が発覚した11月末には中国のネット上で
「不誠実なやり方で保険会社の信頼はなくなった」
「この保険会社には入りたくない」
などと、「恒大人寿」への批判的な書き込みが多数を占めた。
ところが、12月16日に東風日産が訴訟を起こしたことが報道されると風向きが一変。広州恒大が翌17日のクラブW杯準決勝・対バルセロナ戦を控えていただけに、
「大事な試合の前に訴えたのはタイミングが悪い。東風日産に同情していた人も反感を持ったはずだ」
「東風日産を二度と買わない」
といったコメントが並んだ。
本来、問題とされるべきは、広告主でもなく、広州恒大のはずだが、広州恒大への批判はあまり見かけられなかった。
ちなみにバルセロナ戦での広州恒大ユニホームの胸ロゴには、再び「東風日産」が入っていた。