再び「設備投資」と「賃上げ」の圧力も
エコノミストの間では「投資をしようと考えている企業にはプラス」との好意的な受け止めがある一方、英国が20%の実効税率を18%に引き下げるほか、中国や韓国なども20~25%と日本より低いことから、「今回、日本が下げたとはいえ、この程度で国内への投資が大きく増えることはない」「そもそも人口が減少する日本国内に投資する意欲が下がるのは当然」といった声もあり、評価は分かれる。いまのところ、16年春闘での賃上げの見通しも立っていない。
15年7~9月期の国内総生産(GDP)は、設備投資の上方修正で速報値段階のマイナスが一転してプラス1.0%(年率換算)に改訂されたが、個人消費は逆に速報値の0.5%増から0.4%増に下方修正され、相変わらず低空飛行が続く。
「頼みの中国を筆頭に新興国経済が低迷を脱する見通しは立たない」(経済産業省筋)なかで、国内経済も世界経済も、先行き不透明感は容易に晴れない。政府の成長戦略も不発で、このまま国内での投資や賃上げが進まなければ、経済が失速する最悪の展開も杞憂とは言い切れない。
今回の税制改正大綱に「企業の意識や行動を変革していくための方策等についても検討を行う」との文言が入っている。内部留保に課税してため込んだ金を使わせようという意見が政権内で一時浮上して、最終的には見送られた結果だ。賃上げや設備投資の動向によっては、16年以降、安倍政権が経済界に圧力をかける動きが再燃する可能性もある。