「選挙の年に増税なし」 法人税前倒しで20%台に それでも消えないアベノミクス「失速」懸念

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   自民・公明両党が2016年度税制改正大綱を決めた。2017年4月の消費税率10%への引き上げ時に、酒類と外食を除く食料品などに軽減税率8%を適用するほか、法人実効税率(現行の32.11%)を2016年度に29.97%へと引き下げることが目玉だ。

   16年夏の参院選に向け、経済活性化を重視したが、中国をはじめ新興国経済の停滞もあり、アベノミクス失速の懸念は消えていない。

  • 参院選挙を前に、食品の軽減税率も決まった
    参院選挙を前に、食品の軽減税率も決まった
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安倍政権下で7%下がった「法人実効税率」

   政府は、税制改正大綱の内容を全て実施した場合、2016年度に家計や企業などが納める税金は565億円少なくなると試算している。「選挙前に増税はできない」というテーゼに従い、小幅ながら減税になったのは予想通りといえる。

   16年度減税の一番の目玉は法人税減税だ。法人税の実効税率は2014年末に、2016年度は31.33%まで引き下げ、2017年度に20%台に下げることが決まっていた。しかし、首相官邸の肝いりで、20%台への引き下げを1年前倒しし、さらに2018年度には29.74%に下げることも決めた。第2次安倍政権のもとで、2013年度に37%だった法人実効税率は7%幅以上下がることになる。

   ただし、減税分は他の増税で賄うのが原則。今回の減税分は、設備投資減税の縮小や繰越欠損金の控除の見直しのほか、赤字企業にも事業規模に応じて課税する法人事業税の「外形標準課税」の強化でほぼ穴埋めし、差し引きの減税規模は80億円にとどまる。法人税率の引き下げで黒字の企業は減税になる一方、外形標準課税の強化では赤字企業は増税になる。資本金1億円超の企業2万3000社の約3割にあたる6500社が赤字という現実を考えると、税制大綱が「『稼ぐ力』のある企業の税負担を軽減する」と明記したように、"信賞必罰"ともいえる仕組みだ。

   首相官邸が法人税実効税率引き下げに突き進んだ背景には、減税しても賃金や投資になかなかつながらないことへの焦りがあった、と指摘される。円安などで日本企業の経常利益は2012年度から2年で約16兆円増え内部留保も約50兆円も膨らんだが、賃上げは広がりを欠き、設備投資の伸びも約5兆円にとどまるという現実がある。

   このままではアベノミクスが失速するとの見方がでるなか、法人実効税率引き下げで企業に恩を売って投資や賃上げを促し、個人消費の拡大や企業収益の更なる向上へ......という好循環につなげるシナリオが背景にはあるというのだ。

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