2015年12月13日付で、「背の高い人ほどがんになりやすいってホント?」という記事を掲載した。
実は、背の高い人の厄禍と相応するように、「背の低い人ほど長生きする」という研究があるのだ。
長命遺伝子「FOX03」の働き
2014年5月、米ハワイ大学のチームが男性の身長と寿命の関係を調査した。1900~1916年に生まれた約8000人を対象に、「身長158センチ以下」「158~165センチ」「165センチ以上」の3つのグループに分けて死亡率などを比較すると、「158センチ以下」のグループが最も長生きをして、背が高くなるほど寿命が短くなる傾向がみられた。
確かに、犬を例にとると、同じ種なのに大型犬の寿命は10歳前後だが、小型犬は14~18歳と長生きする。では、人間の場合はなぜなのだろうか。
ハワイ大学の研究チームは、背の低い人ほど長命遺伝子といわれる「FOX03(フォックススリー)」が多いことを突きとめた。FOX03は、体の代謝にとって重要なインスリンの分泌を抑える働きがある。これによって成長期に体のサイズが大きくなるのを抑えられてしまうが、代わりにがんを抑制し、細胞の抗酸化の役割も果たして長生きにつながるという。
長寿の秘密は南米先住民の人々にあった
背の低さが長生きに関係する例として、最近、注目されているのが、南米の一部の先住民にみられる「ラロン型低身長症」(ラロン症)の人々の研究だ。ラロン症の人たちは先天的な成長ホルモン受容体の異常により、成長ホルモンが機能しないため、身長が120センチくらいまでしか伸びない。研究者が驚くのは、ラロン症の人たちは極めてがんになりにくいということだ。彼らが住む村と同じ地域の人々とのがんの発症率を比較すると、17分の1だ。そのうえ糖尿病の発症率は皆無に近いという。
研究者たちは、成長ホルモンが作り出す、がん発症と関係が深い「IGF-1」の影響を受けないからではないかとみている。7歳児くらいの身長で一生をすごす人々が、現代医学の長寿研究のカギを握っている。